研究実績の概要 |
本研究は申請者らがこれまで見出してきた「腸管免疫の恒常性はgut-associated lymphoid tissues(GALT)内抗原提示細胞の正常なクロストークによって制御され、その異常がIBDの本態となる」という独自の概念や知見を基盤として、我々が既に樹立している新規バイオセンサーおよび5D生体イメージング技術を応用し、GALTにおける免疫調節機構について詳細に解析している。その結果、本研究では当該研究期間に以下のような成果が得られた。1)パイエル板をはじめとしたGALTの樹状細胞やマクロファージといった抗原提示細胞の異なるサブセットが、同一の抗原に対して異なる獲得免疫応答を誘導している事実を見出した。2)こうしたメカニズムの異常によって誘導される各抗原提示細胞サブセット、またそれによって誘導される獲得免疫担当細胞それぞれの活性化状態の変化を、IBDモデルの発症初期に確認できる可能性に着目し、FRET技術を応用した新規バイオマーカーYC3.60と各細胞種Cre transgenicマウスの交配、生体イメージング技術等を融合し、各細胞の活性化状態を5次元的(x, y, z, time, activity)に観察できる解析系の樹立に成功した。これらの研究成果はこれまで難解であった免疫寛容時と腸炎発症時のそれぞれにおけるGALTの免疫応答を詳細に解析することが実現できる可能性を示唆している。さらに現在、これらの成果を基盤として、IBDの病態解明に貢献できる重要な解析プラットフォームの構築を試みている。
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