研究課題/領域番号 |
18K07998
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山下 竜也 金沢大学, 先進予防医学研究センター, 准教授 (30334783)
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研究分担者 |
山下 太郎 金沢大学, 附属病院, 准教授 (90377432)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肝細胞がん / がん幹細胞 / がんエコシステム / CCL20/CCR6 |
研究実績の概要 |
前年度の解析により、肝細胞がん患者血清中のCCL20と予後・悪性度と関連する可能性を明らかにした。さらに切除標本の検討でCCL20陽性肝細胞がん周囲にその受容体であるCCR6を発現した間質細胞の浸潤を明らかにした。これらの結果より肝がん幹細胞がCCL20を分泌しCCR6陽性間質細胞を誘導しがんエコシステム形成に関与する可能性が示唆された。 本年度はヒト肝細胞がん組織中のCCL20とCCR6発現の関連を解析した。肝細胞がん組織を用いた網羅的遺伝子発現解析により、CCL20高発現肝細胞がんでは、CCL20低発現肝細胞がんに比べて、癌部でのCCR6発現が亢進しており、免疫組織染色でもCCL20高発現肝細胞がんではCCR6陽性細胞がより浸潤していることを見出した。 次にCCL20の肝がん幹細胞維持への関与の検討のため肝がん細胞株におけるCCL20発現を解析したところ、EpCAM陽性肝がん細胞株においてCCL20が高発現していた。EpCAM陽性肝がん細胞株であるHuh7細胞を用いたEpCAM陽性集団のソーティングやスフェロイド形成実験ではEpCAM高発現条件下で、CCL20発現はさらに亢進した。しかし、siRNAや抗体を用いCCL20を抑制しても細胞増殖能やスフェロイド形成能に変化を認めなかったことから、CCL20の肝がん幹細胞維持への直接の関与は否定的であった。 最後に、肝がんに対するCCL20中和抗体の効果を肝がんシンジェニックマウスモデルにて検討したところ、腫瘍内CCR6陽性細胞の中でマクロファージを主に減少させ良好な抗腫瘍効果を示した。 これらの結果からEpCAM陽性肝がんで高発現するCCL20は、CCR6陽性マクロファージの浸潤を誘導し肝がん悪性形質に関与し、CCL20中和抗体はCCR6陽性マクロファージを抑制し抗腫瘍効果をもたらす事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの解析結果から、肝がん幹細胞がCCL20を分泌し、マクロファージを始めとするCCR6陽性間質細胞を誘導する事で、がんエコシステム形成に関与している事が強く示唆された。さらに、幹細胞性肝がんにおける治療標的としてCCL20/CCR6ケモカイン軸が重要である事が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
CCL20/CCR6ケモカイン軸を標的とした新規肝細胞がん治療の確立を目的として、免疫チェックポイント阻害剤を含む他の抗悪性腫瘍薬との比較ならびに併用療法の有用性を検討する。さらに、治療に伴う腫瘍内免疫細胞変容の詳細を検討する。
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