前年度までの解析結果から、EpCAM陽性肝がん幹細胞で高発現するCCL20が、CCR6陽性免疫細胞のがん部への浸潤を誘導する事で、肝がん微小環境構築に関与しており、CCL20中和抗体は肝がん微小環境へのCCR6陽性細胞浸潤を抑制する事により抗腫瘍効果をもたらす事が示唆された。 これまでの解析結果を踏まえ、今年度はCCL20/CCR6ケモカイン軸を標的とした新規肝細胞がん治療の確立を目的として、免疫チェックポイント阻害剤と治療効果を比較し、さらにCCL20中和抗体がもたらす腫瘍内免疫細胞変容の詳細を検討した。当科で樹立したシンジェニック肝がんマウスモデルを用い、CCL20中和抗体及びPD-1抗体を週2回4週間投与した結果、CCL20中和抗体はPD-1抗体に比して有意な腫瘍増殖抑制効果を示した。腫瘍組織内の免疫細胞変容を免疫組織化学染色にて解析した結果、治療後のCD4/CD8の誘導には両治療で有意差は見られなかった一方、CCL20中和抗体は、CCR6陽性細胞ならびにF4/80陽性マクロファージの有意な抑制効果が認められた。 以上の結果より、CCL20/CCR6ケモカイン軸の標的治療は、肝がん幹細胞が構築するがん微小環境を標的とした肝がん薬物療法の新機軸となる可能性が示唆された。
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