炎症性腸疾患の治療薬として、生物学的製剤が次々と医療の場に導入されその効果も実臨床家が実感できる現状となっている。そのような中で生物学的製剤の導入は、炎症性腸疾患(IBD)の内科治療に革新的進歩をもたらした。さらに、抗体創製技術の進歩によりキメラ型抗体製剤からヒト型抗体製剤が主流となりつつある。ファージディスプレイ法によるヒト型製剤は相補性決定領域の人為的改変から弱い抗原性を持つが、トランスジェニックマウス法による製剤はさらに抗原性が低いとされる。ただ、薬剤抗原性の低下は、薬剤定量法による薬物動態解析の困難さにつながる。研究の目的は以下となる。(1)トランスジェニックマウス法による完全ヒト型生物学的製剤の血中濃度および中和抗体定量法を世界に先駆けて開発し、完全ヒト型生物学的製剤の体内薬物動態を明らかにする。(2)トランスジェニックマウス法による完全ヒト型生物学的製剤血中濃度と中和抗体血中濃度を指標とした完全ヒト型生物学的製剤の効果を最大限に引き出す炎症性腸疾患テーラーメイド免疫療法のストラテジーを構築する。この3年間に我々は我々はトランスジェニック法で作成されたヒトIgGのウステキヌマブの血中濃度と抗薬物濃度の測定系を確立し報告した。また、ファージディスプレイ法にくらべ、抗薬物抗体の産生が明らかに低いことも見いだした。これらの結果から、完全ヒト型生物学的製剤の体内薬物動態を明らかにし、トランスジェニックマウス法による完全ヒト型生物学的製剤血中濃度と中和抗体血中濃度を指標とした完全ヒト型生物学的製剤の効果を最大限に引き出す炎症性腸疾患テーラーメイド免疫療法のストラテジーを構築する基板を確立した。
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