研究課題
B型肝炎ウイルス(HBV)感染性粒子(Dane粒子)の生化学的性状に関して、特定のヘビ毒由来の分泌型ホスホリパーゼA2 (CM-II-sPLA2)がHBV粒子の感染性をどのように阻害するのかについて、C型肝炎ウイルス(HCV)と比較しながら検討した。まず、sPLA2処理HBVの標的細胞への吸着は非処理対照HBVと同程度であることを明らかにした。一方、sPLA2処理HCVの標的細胞への吸着は非処理対照HCVに比べて著しく減弱した。密度勾配超遠心法によりウイルス粒子を分画したところ、sPLA2処理HCV粒子のピークは全く検出されないほど強く傷害されたと考えられたが、sPLA2処理HBV粒子のピークは少し密度が大きい方に移動したが、明瞭なピークは残存していた。電子顕微鏡ネガティブ染色法により、sPLA2処理HBV粒子は非処理HBV粒子とほぼ同様の粒子構造を保っていた。次いで、sPLA2処理していないHBV粒子を4℃で標的細胞に吸着させた後に37℃で培養し、一定時間してからHBV吸着細胞をsPLA2で処理する実験では、37℃培養開始後40分以内にsPLA2処理を行った場合に、37℃培養開始直後のsPLA2処理の場合と同程度の強いHBV増殖阻害を示した。以上の結果より、sPLA2はHBV粒子の細胞への吸着には有意の影響を及ぼさないが、その後の侵入・脱殻の過程を著しく阻害すると考えられた。HBV感染性粒子の出芽部位を検討する目的で、小胞体(ER)機能に重要な役割を果たすことが知られているSEC24をsiRNAでノックダウンしたHBV複製細胞から分泌されるHBV粒子の量をHBV DNAを指標にして比較解析したが、ノックダウン細胞と対照細胞の間で有意な差は見られなかった。
2: おおむね順調に進展している
HBV粒子(Dane粒子)の感染性に及ぼすsPLA2の阻害作用を、HCV粒子と比較しつつ明らかにすることができた。また、密度勾配超遠心分画解析や電子顕微鏡ネガティブ染色解析により、HBV粒子とHCV粒子に及ぼすsPLA2の作用の違いを明確にすることができた。さらに、sPLA2のHBV阻害作用は、細胞への吸着過程ではなく、侵入・脱殻過程に及ぼされることを明らかにした。
ER-Golgi系分泌経路に重要な役割を果たしているSEC24 アイソフォームのsiRNAによるノックダウン実験をより確実に再現するとともに、MVB機能に重要な役割を果たしているATG5やTSG101を特異的siRNAによりノックダウンし、HBV複製細胞からのHBV感染性粒子の産生が抑制されるか否かについて調べる。同様に、U18666AなどのMVB阻害剤の影響についても調べる。これらの結果より、HBV感染性粒子の出芽におけるERやMVBの関与を考察する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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