研究課題
B型肝炎ウイルス(HBV)を感染させたHepG2-NTCP細胞の培養上清中にHBV感染性がどの程度存在するかについて調べた。感染10日後のHepG2-NTCP細胞の培養上清をポリエチレングリコール(PEG)処理後に遠心して濃縮し、それをPEG存在下でHepG2-NTCP細胞に接種して10日後に、抗HBV抗体を用いた蛍光抗体法によりウイルス感染細胞数を測定した。PEGによる濃縮率を考慮して、HBV感染HepG2-NTCP細胞から10^3 ffu/mlのオーダーの感染性HBVが培養液中に放出されていることがわかった。市販のエクソソーム回収キットを用いて同様の実験を行い、その結果との比較より、HBV感染HepG2-NTCP細胞から放出される感染性因子のうち、少なくとも一部は、エクソソーム内に包含されて、細胞外に放出されている可能性が示唆された。一方、小胞体(ER)機能に重要な役割を果たしているSEC24アイソフォーム、及び多胞体(MVB) 機能に重要な役割を果たしているATG5やTSG101を、それぞれ特異的siRNAでノックダウンして、細胞から放出されるHBV感染性因子の量を対照細胞と比較解析した場合には、siRNAによる有意な抑制効果が認められないことをあらためて確認した。以上の結果より、HBV感染性粒子の出芽部位の詳細な同定には至らなかったが、HBVとHCVのエンベロープの性状の差異及びHBVとHDVの脱殻機序の差異が明らかになり、HBV感染細胞からの感染伝播は、個々のHBV粒子の放出のみならず、HBV粒子やHBVゲノムを包含するエクソソームを介する放出と標的細胞による貪食の経路が関与することが示唆された。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Toxicon
巻: 191 ページ: 25-37
10.1016/j.toxicon.2020.12.007
巻: 188 ページ: 55-64
10.1016/j.toxicon.2020.10.014
Asian Pacific Journal of Tropical Medicine
巻: 13 ページ: 8-16