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2018 年度 実施状況報告書

慢性肝障害および肝発癌、進展におけるERストレス、PERKの役割

研究課題

研究課題/領域番号 18K08007
研究機関愛媛大学

研究代表者

日浅 陽一  愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (70314961)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワードPERK / PKR / ERストレス / 肝細胞癌 / MAPK / eIF2-alpha / c-Fos / c-Jun
研究実績の概要

PKR-like endoplasmic reticulum kinase (PERK)はPKRと同様にeIF2-alphaを下流シグナルとして共有するが、PKRと異なりERストレスに誘導される。近年、脂肪肝やアルコールによる発癌例が相対的に増加しているが、その原因としてERストレスが注目されているものの、PERKの肝細胞癌の役割は不明である。本研究ではPERKの肝細胞癌における役割を明らかにし、その下流における分子メカニズムを明らかにする。
平成30年度の実績としてヒトの臨床検体での肝組織を用いて非癌部のPERKの発現を調べたところ、PERK mRNAが増加していた症例では肝予備能の低下が示唆され、肝予備能が低下した症例ではPERK発現の亢進が推定された。また、同一症例における肝細胞癌組織と背景肝の組織の比較では肝細胞癌の組織中のPERK mRNAが増加し、PERKの蛋白発現増加が推測された。リン酸化PERKの発現も肝細胞癌で影響を受けていた。これまでの報告では種々の腫瘍細胞においてPERKの発現が亢進していることが報告されており、肝細胞癌においてもPERKの発現に影響を及ぼすことが示された。申請者はこれまでにPKRにおいてc-Fos, c-JunがPKRの下流分子として肝細胞癌の増殖に関連することを報告している。PERKとの関連をみるために、PERKの発現をsiRNA、発現plasmidにより変化させうるか検討し、効果的なup-regulation, down-regulationが可能であることを確認した。今後、この実験系を用いて、肝細胞癌における細胞増殖、恒常性維持にPERKがどのように影響しているのか詳細な検討を行う。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は臨床検体におけるPERKの発現を評価するとともに、PERK高発現症例の特徴について検討を行った。PERKの発現はreal time RT-PCR, Western blottingを用いてPERKの発現をそれぞれ mRNA, 蛋白レベルで評価した。臨床検体は癌部、非癌部からmRNA, 蛋白質を抽出し、それぞれについて検討を行った。まず、非癌部のPERKの発現について解析を行った。非癌部におけるPERK mRNAの発現は、肝予備能の指標との関連がみられた。
次に、癌部では同一症例の非腫瘍組織と比較しPERKのmRNA, タンパク質発現の増加がみられた。PERKの活性化を表すリン酸化PERKの発現も変化していた。これらのことより、肝細胞癌の発がんにより、PERKの発現が変化しうることが示された。
癌部で亢進したPERKの発現が細胞増殖にどのような影響を与えるかを検討するために、肝癌細胞株Huh7においてPERKの発現量を変化させた。PERKの発現を変化させるためにPERK siRNA、PERK発現プラスミド、Tunicamycinを用いて実験を行った。PERK siRNA、発現プラスミドのtransfectionにより、PERK mRNA、PERK蛋白が増減することを確認した。またTunicamycinの投与によりPERK mRNA、PERK蛋白の増加がみられた。今後これらの実験系を用いてPERK下流の細胞内分子の変化について検討を行っていく予定である。

今後の研究の推進方策

申請者はこれまでにPKRと肝細胞癌における増殖の関係についてc-Fos, c-Jun, MAP kinase pathwayが関与していることを報告している。しかし、下流にeIF2-alphaを共有するPERKについて、肝細胞癌の増殖およびこれらの細胞内分子との関連は不明である。
本年度の研究成果より、ヒトの臨床検体を用いた検討では肝細胞癌組織では非肝細胞癌組織に比し、PERKの発現が亢進していることが示された。今後は肝癌細胞株を用い、PERK up-regulationあるいはdown-regulationにおいて、これらの蛋白やMAPKシグナルがどのように変化するか、さらに詳細な検討が必要である。また今後、その他の関連分子の検索のため、肝細胞癌株でのPERK発現変化時に、連動して変化する細胞内癌関連分子の変化について網羅的に解析する。PERKはオートファジー、アポトーシスにも関わっていることが報告されており、肝細胞の恒常性維持、癌化、癌細胞増殖への役割についても観察する。

次年度使用額が生じた理由

予定していた検査が比較的高額で提出が遅れたため、翌年度分として請求することとした。平成31年度は網羅的解析などを予定している。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)

  • [雑誌論文] Stimulated hepatic stellate cell promotes progression of hepatocellular carcinoma due to protein kinase R activation.2019

    • 著者名/発表者名
      Imai Y, Yoshida O, Watanabe T, Yukimoto A, Koizumi Y, Ikeda Y, Tokumoto Y, Hirooka M, Abe M, Hiasa Y.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 14 ページ: e0212589

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0212589.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Roles of protein kinase R in cancer: Potential as a therapeutic target.2018

    • 著者名/発表者名
      Watanabe T, Imamura T, Hiasa Y.
    • 雑誌名

      Cancer Sci

      巻: 109 ページ: 919-925

    • DOI

      10.1111/cas.13551.

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2019-12-27  

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