研究課題
小胞体ストレス(ERストレス)は肝細胞の変性に関与し、発がんおよびがん進展にも重要な役割を担う。肝細胞においてPKR-like endoplasmic reticulum kinase (PERK)はERストレスにより活性化しアポトーシスを誘導するが、肝がん細胞におけるPERKおよびERストレスの役割はまだ解明されていない。PERKおよびERストレスの肝細胞がんへの影響、がん進展への関与について解析した。複数の肝がん細胞株に合成したPERK siRNAを用いてPERKをノックダウンし、変化する遺伝子をトランスクリプションアッセイにて網羅的に解析した。その結果、long noncoding RNAであるRNA component of mitochondrial RNA processing endoribonuclease (RMRP)を変化する分子として同定した。次に、ツニカマイシンでERストレスを誘導したところ、PERKの発現増加に伴い、RMRPの発現低下がみられた。ERストレスはPERKの発現増加を介してRMRPを抑制していることが示唆された。RMRP siRNAによるRMRPノックダウンを行ったところ、アポトーシス誘導が亢進した。アポトーシス誘導メカニズムを調べるために、Bcl-2、カスパーゼの発現を解析したところ、RMRPのノックダウンによりBcl-2の発現は低下しcleaved カスパーゼ3の発現増加がみられた。これらの結果より、肝細胞がんにおいてlong noncoding RNAであるRMRPは、PERKおよびERストレスにより抑制され、内因性経路によりアポトーシス誘導を促進していると考えられた。RMRPは肝細胞がんの増殖とPERKを介したERストレスの下流シグナルを制御する細胞内分子であり、肝細胞がんにおいて新たな治療標的となりうる可能性がある。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
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