研究実績の概要 |
膵発がんモデルマウスを用いて、メトホルミンが発がんに与える影響を解析した。我々は過去数年間にわたり上記のような膵発がんモデルマウスの確立のために努力を行ってきて最近ようやく確立することができた。このモデルでは、ヒトの膵発がん前駆病変であるPanIN(pancreatic intraepithelial neoplasia)が自然発症し、PanIN 1からPanIN 3へと経時的に悪性度が増し、浸潤がんを発症する。このモデルを用いて、メトホルミン投与による膵発がん抑制効果を検証した。 まず、PanINの進行に与える影響を解析するため、定量システムを確立した。膵臓内に出現したPanINは病理組織でしか確認できないため、定量は膵臓切片のHE染色で行った。この際、検体間の誤差を最小限にするため、標本の作製時に十二指腸乳頭部と脾門部を結ぶ直線で膵臓を分割し、固定する。そして、この割面でパラフィン包埋切片を作成し、HE染色後にPanINの数を測定する。さらに分子メカニズムを解明するため、メトホルミン投与による膵正常組織における遺伝子発現解析やタンパク解析を行った。遺伝子解析としては、リアルタイムPCR法を用いてmTOR下流のcyclin D1, c-mycなどの解析を行った。蛋白解析はウエスタンブロット法を用いて、細胞増殖に必要なAMPK, mTOR, S6K, S6Pなどの解析を行ったPanIN病変においても同様に遺伝子解析や蛋白解析のほか、免疫染色法などによりKi67などの腫瘍組織における増殖細胞を検出するマーカーを用いて、メトホルミンの腫瘍への作用を明らかにし、新しい分子標的の同定を目指した。
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