研究課題
我々は、C型慢性肝炎患者(CHC)の腸内フローラが病初期から変化し、病期進行につれて腸内フローラの破綻(dysbiosis)が顕著になることを報告した(Clin Infect Dis. 2018)。本研究ではC型肝炎治癒後の発癌ハイリスク群囲い込みを可能にする腸内フローラモデルの実用化を目的とした。病期の異なるCHCと健常人の血清胆汁酸組成、腸内フローラおよび肝組織RNAシーケンシング(RNA-Seq)データを用いてCHCと非CHCの肝内胆汁酸代謝酵素発現量を比較した。便中・血清胆汁酸組成は、液体クロマトグラフィータンデム質量分析装置で測定した。RNA-Seqでは、CHC 2群(線維化非進展例 n=22, 線維化進展例 n=42)を正常肝組織と診断された非CHC 12名と比較した。RNA-Seqデータは、研究班及び国際がんゲノムコンソーシアムから入手した。便中・血清胆汁酸組成の変化は、CHC病初期から現れていた。CHCでは便中デオキシコール酸(DCA)量が健常人と比較して有意に減少したが、リトコール酸(LCA)量は不変であった。RNA-Seqデータから、CHCでは病初期から胆汁酸代謝古典的経路の主要酵素cytochrome P450 8B1(CYP8B1)の発現量が有意に低下していた。さらに、便中DCA量は腸内フローラでのレンサ球菌属の相対量と逆相関し、CHCで見られるdysbiosisの特徴は便中DCA減少と関連していることが分かった。HCV感染では肝内での胆汁酸代謝酵素の発現異常とdysbiosisが胆汁酸代謝異常を引き起こし、gut-liver axisを変化させる。この結果をモデル化し、実用化に向けてデータを蓄積する。
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Nagoya Medical Journal
巻: 56 ページ: 273, 278