研究課題
これまでに過敏性腸症候群(IBS)における粘膜細菌叢(MAM)について下痢型IBS(IBS-D)、便秘型IBS(IBS-C)および健常者の3群で比較検討した。また下痢型IBS(IBS-D)患者群において、血清サイトカインや食物アレルギーが腸内細菌叢とどのように関連しているのか評価した。方法は大腸内視鏡検査の際に、内視鏡下にブラシを用いて回腸、S状結腸粘膜の粘液を採取した。MiSeqによる16Sリボゾーム遺伝子のV3-V4アンプリコンシークエンス解析を実施した。QIIMEを用いて微生物の属レベルまでの同定を行い、細菌構成比、多様性について検討した。メタゲノム機能予測解析(PICRUSt)を追加した。α-diversityは均等度がcontrol群と比較してIBS-Dで特に低かった。PCoA解析において3群間で有意差を認めた。IBS-Dにおいて、Megamonas, Prevotella、IBS-CにおいてRuminococcus, Doreaが有意に多く、IBS-DにおいてRuminococcusが、IBS-CにおいてFaecalibacterium, Roseburiaが有意に少なかった。PICRUSt解析においても、IBS2群で差を認めた。Prevotellaは血清TNF-α値と正の相関を示し、抗原感作陽性IBS-D群はLachnospiraceae科が多く、LachnospiraceaeはTNF-α(r=0.52)およびIL-4 (r=-0.55)値と相関した。 IBS-DとIBS-CのMAMに差を認め、腸内細菌叢がIBS typeを規定する要因となる可能性が示唆された。さらにIBS-D患者において食物アレルギーの有無によって腸内細菌叢の変容が認められ、その変容は全身性の微小炎症とも関連している可能性が示唆された。(DDW 2020 米国シカゴで採択 論文投稿中)
2: おおむね順調に進展している
中間解析の結果を国内外の学会で報告し、さらに検体採取を追加し取集はほぼ終了した。今回の検体解析の結果を追加し、解析を行い、今年度中に論文投稿を行う予定。
今回差異が認められた腸内細菌叢についてさらに、症状やQOL 治療反応性との相関について検討を行い、また患者の腸管バリア機能や胆汁酸代謝に関わる遺伝子多型、糞便あるいは腸液中の胆汁酸や短鎖脂肪酸やドーパミンなどの腸内細菌代謝産物等についても検討を追加する予定。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
Gan To Kagaku Ryoho.
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