研究実績の概要 |
Coupling factor 6は核内酸性化による老化促進作用を有し、その原因蛋白質がNM_026333であることを背景に、標的分子と阻害薬の作用について検討した。 本研究で明らかにした第1点目は、NM_026333の標的分子チャネルを同定したことである。His-tag NM_026333を作製し、HEK293細胞に導入後、Talon beadを使用しNM_026333に結合している蛋白質を抽出した。種々のチャネルに対する抗体(TRPC3,TRPC6, Cav1,2,NCX1)を用いてWestern blotを行い、標的分子はNCX1であることを明らかにした。すなわちNM_026333は細胞膜に存在するNCX1に作用し、細胞内カルシウム濃度の調節に関与していることが明らかとなった。第2点目は、NM_026333の標的分子であるNCX1の阻害薬のアンチエイジング作用を確認したことである。NCX1阻害薬のSN-6をCF6過剰発現マウス線維芽細胞に投与後24-48時間で、老化のhallmarks (genomic instability, autophagy, epigenetics, telomere attrition) がすべて改善された。具体的には、核膜ラミン、エメリンの減少が改善され、LC3IIとP62の増加とAtg 7の減少が改善され、H3K4 me3とH4K20 me3の増加並びにH3K9 me3とH3K27 me3の減少がそれぞれ改善された。またテロメア長はPCR法により延長することが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度の計画は以下の通りであった。平成30年度で明らかにする第1点目は、NM_026333の標的分子チャネルを同定することである。標的分子は細胞膜に存在し、細胞内カルシウム濃度の調節に関与していると推測される。His-tag NM_026333を作製し、HEK293細胞に導入後、Talon beadを使用しNM_026333に結合している蛋白質を抽出する。その後種々のチャネルに対する抗体(TRPC3,TRPC6, Cav1,2, NCX1)を用いてWestern blot法で同定する。第2点目は、NM_026333の標的分子が同定された後、そのチャネル阻害薬を投与し、老化促進機序が抑制されるかを、CF6過剰発現マウス線維芽細胞に投与し、primary aging hallmarksを測定することにより明らかにする。 2018年度の研究成果として当初計画の第1点目と第2点目を明らかにすることができた。そのため、順調に進展していると判断した。
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