研究課題/領域番号 |
18K08029
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐藤 光希 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (40600044)
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研究分担者 |
八木原 伸江 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任助教 (70750347)
南野 徹 新潟大学, 医歯学系, 教授 (90328063)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 虚血性心疾患 / 心室細動 / J波 / 遺伝子 |
研究実績の概要 |
虚血性心疾患、特に急性心筋梗塞における死因の大部分は合併する心室細動が原因である。その虚血性心室細動における臨床データや遺伝学的な関連を解明し、その病態機序に迫ることが本研究の目標である。 虚血性心室細動の遺伝的背景を探るにあたっては、多数の症例とそのゲノムを要する。われわれは、協力施設や当院の虚血性心室細動の100症例以上の症例を集積し、そのゲノムを得ることができた。今後は更に症例の追加を行っていく予定である。また、この多数例のゲノムを基盤として、すでに我々が構築したスクリーニングアッセイによる対象遺伝子の絞り込みを用いて原因遺伝子の絞り込みを行った。 また、以前より我々は虚血性心室細動と心電図上のJ波に関連があることを報告してきた(申請者ら、Europace 2012, Int J Cardiol 2014に掲載)。このような背景から心電図上のJ波とについても本研究を行うにあたって着目している。すなわちJ波と虚血性心室細動の関連やJ波がその予測因子となりえるかについても検討を加えている。 当該年度において、以下の報告を行った。虚血性心疾患の1つである冠攣縮狭心症の患者で心室細動を有する群において、冠動脈造影時のJ波の変化を解析した。冠動脈造影によりJ波が顕性化したり増強したりする所見がとらえられた。解析を加え、造影剤による心筋虚血への影響がJ波の形成に関与していることを示し報告した(申請者ら、J waves induced during coronary angiography in patients with vasospastic angina and its implication. Journal of Electrocardiology 2021に掲載)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
原因遺伝子が単一ではないことの多い循環器分野では、候補遺伝子解析での病原遺伝子の報告は限られている。特に家系の規模が小さい本邦ではその応用が難しい場合が多い。明確な遺伝性が見いだせない疾患が多い虚血性心疾患でも同様である。そこで、本研究では、虚血性心室細動の多数例の臨床データとそのゲノムを必要とする。以前からの症例の集積に加えて、協力施設や当院からの臨床データとゲノムの集積を引き続き行っている。令和2年度においては、コロナウイルス感染の蔓延により、外来・入院患者の制限や偏りが生じた。他施設からの患者紹介や研究参加の相談にも一部困難が生じてしまった。また、他施設へ依頼に訪問することや情報交換の場を設けることが難しい状況となっている。結果的に、新たな症例サンプルの集積が減少し遅れる事態となった。 また、遺伝子解析の結果や致死性心室性不整脈に関連する研究成果の公表においては、一部を国際雑誌に投稿・掲載することができた(申請者ら、Journal of Electrocardiology 2021に掲載)。 しかし、コロナウイルス感染の蔓延により、国際学会・国内学会への参加や発表が困難となり、予定していた情報発信が制限されてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
集積した症例やそのゲノムを用いて、虚血性心室細動の原因遺伝子の探索を進めていく。現時点では、明らかな原因遺伝子の発見には至っておらず、来年度以降に遺伝子スクリーニングを進めることでその発見に努めたい。虚血性心室細動は、少ないながらも家族性発症も報告されており、集積したサンプルでも家族性発症の場合には、優先して解析を進めることがより早期の結果を得るために必要と考えられる。 また、原因遺伝子を発見することで、本研究の第二の目的である『遺伝子型に応じた虚血性不整脈の個別化治療を確立し、その発生と突然死を予防する』という分子・細胞レベルの基礎研究を発展させることが可能となる。できるだけ早期に原因遺伝子の候補を探索して基礎研究を進める必要がある。 コロナウイルス感染の蔓延により、国際学会・国内学会への参加や発表が困難となり、予定していた情報発信が制限されてしまった。研究成果についての情報発信については、ウェブ会議や雑誌への投稿・掲載を用いて進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
全国の感染症対策として、遠隔地への移動が制限され、学会や研究会などの研究発表の機会がほとんどない状態となった。また、施設間の会議や面会なども行えなかった。それらに伴う交通費や宿泊費などの費用が不要となった。来年度には学会や研究会を含めた出張費を要するため、来年度に持ち越して使用する予定である。
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