研究課題
基礎研究では、CD271遺伝子機能欠損マウスと骨髄移植モデルを組み合わせた頸動脈結紮モデルを用いて、CD271の内膜肥厚(以下、プラーク)形成への関与と制御機構を明らかにするために下記の実験を行った。8週齢の雄のCD271遺伝子欠損マウスと野生型マウスの右頸動脈を結紮し血管障害モデルを作成し、片側頸動脈結紮14日, 28日後にマウスを安楽死させ、頸動脈結紮部位近傍の動脈に生じるプラークを以下a,b,cの方法で定量的かつ定性的に評価しすることで、CD271陽性細胞の動脈プラーク形成に与える影響について検討を行った。a. CD271遺伝子欠損マウスでは、動脈プラーク面積が増加した。b. 免疫組織学的検討により、野生型マウスにおいてはプラーク内にCD271陽性細胞の集積とアポトーシス細胞の増加を認めた。一方CD271遺伝子欠損マウスでは、プラーク内におけるアポトーシス細胞の減少を認めた。c. 定量的遺伝子発現解析(qPCR)の結果、CD271遺伝子が、アポトーシスによりプラーク形成を制御することを明らかにした。またGFP陽性骨髄移植モデルを用いた検討により、骨髄由来のCD271陽性細胞が、プラーク形成を制御することを明らかにした。臨床研究では、急性冠症候群患者30名を対象に、急性期末梢血中のCD271陽性細胞数をフローサイトメトリ解析にて測定し、冠動脈非責任病変のプラーク量を血管内超音波検査画像により定量評価した。対象患者を12ヶ月間フォローし、12ヶ月後に同指標を再評価し、ベースラインと比較した。その結果、急性期の末梢血中CD271陽性細胞数と冠動脈非責任病変のプラーク量の変化率が逆相関することを明らかにした。急性冠症候群発症時の末梢血CD271陽性細胞数が、冠動脈予後を予測するマーカーとなりうることを示した。
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