研究課題/領域番号 |
18K08034
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木下 秀之 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (30467477)
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研究分担者 |
桑原 宏一郎 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (30402887)
中川 靖章 京都大学, 医学研究科, 助教 (70452357)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肺動脈性肺高血圧 / 右室肥大 / 心不全 / ナトリウム利尿ペプチド / Caチャネル |
研究実績の概要 |
肺高血圧の発症、進展においてCa2+チャネルの一種であるTRPC3、TRPC6の関与について報告されている。TRPC3とTRPC6の肺高血圧症への関与について、遺伝子改変マウス、及び両者を阻害する新規化合物pyrazole4(pyr4)を用いて検討した。マウスのMonocrotaline-pyrrole誘発肺高血圧モデル、及び低酸素誘発肺高血圧モデルのいずれの肺高血圧モデルにおいても、TRPC3/TRPC6ダブルノックアウト群では肺動脈圧と右室重量を有意に改善し、肺組織における肺動脈中膜の肥厚を抑制した。また、Monocrotaline誘発肺高血圧モデルラットにおいて、Pyr4は肺動脈圧や右室重量を有意に改善し、TRPC3、TRPC6の下流にあるRCAN-1の発現亢進を抑制した。ヒト特発性肺動脈性肺高血圧症患者由来の肺動脈平滑筋細胞においてPyr4はPDGFによる細胞増殖を用量依存的に抑制した。これらの結果からTRPC3/TRPC6を阻害する治療は、肺高血圧に対し有用である可能性が示された。 C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は血管系においては、血管内皮細胞で産生、分泌され、autocrine, paracrineにより局所で作用している。血管内皮/血管平滑筋特異的CNP/GC-Bノックアウトマウスにおいて肺高血圧刺激を行い、肺動脈性肺高血圧症におけるCNP/GC-B系の意義を検討した。血管内皮特異的GC-B KO群と血管内皮特異的CNP KO群では、右室圧の上昇と、右室重量の増加を認め、ET-1や炎症性サイトカイン、TGFβのmRNA発現が亢進していた。以上の結果から、血管内皮のCNP/GC-B系が肺高血圧に対して保護的な作用を有する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺高血圧モデル刺激の安定性に工夫が必要であったが、TRPC, CNP-GC-B経路が肺高血圧モデル動物において肺高血圧の発症・進展に関与している事に矛盾しない結果が得られており、実験系として順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
TRPC, CNP-GC-B経路の肺高血圧モデル動物にお蹴る役割、意義について動物実験や培養細胞を用いた実験を行い、さらにデーターを集積する。また、TRPC、CNP GC-B経路の下流シグナルについての検討も今後行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
肺高血圧モデル動物の安定性・再現性の検討のため、薬物投与による動物実験計画を次年度に変更したため、物品費(試薬購入費用)を翌年度使用する予定としています。
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