研究課題
特発性心筋症や二次性心筋症などの心筋疾患は、原因遺伝子異常や発症機序が明らかにされ、その病態が徐々に解明されてきた。一方で治療方法は薬物療法や機械的補助、最終的には心臓移植といったいわゆる対症療法に限られており、原因療法の開発が疾患克服のため望まれている。近年、遺伝子やその転写産物をターゲットにした遺伝子治療や核酸医療薬が考案されているが、現在まで臨床応用可能な原因療法の開発には至っていない。本研究では、遺伝子異常により不足する正常蛋白質を核酸により補充するという原因療法を開発し、特発性心筋症をはじめとした心筋疾患治療において新たな臨床応用可能な核酸医療薬を確立することを目的とした。初年度は拡張型心筋症を発症するモデルマウスである核膜内側に存在するラミン蛋白をコードするLmna遺伝子ノックアウトマウスに対し、生直後に正常野生型ラミンmRNA内包ミセルを投与し、野生型ラミン蛋白を発現させて治療効果を検証する方針とした。Lmna KOマウスは異常アレルを2本有すると、すなわちhomozygousな遺伝子異常を有すると、拡張型心筋症を発症するのみならず、成長障害を呈し、5-6週齢で死亡する。このhomozygous Lmna KOマウスに対し、正常野生型ラミンmRNAを投与し表現形の改善を期待した。しかし心臓へのmRNAのデリバリーが効果的でなく、デリバリー法の再検討を要した。2年目は、ラミン蛋白の補充による治療効果を検証するため、AAVを用いてラミン蛋白を補充し、表現形の改善効果を検証した。AAVを用い、ラミンmRNAを効率よく心筋内で発現するシステムを開発し、実際に投与を行なった。その結果、ラミン発現群でコントロールマウスに対し生存期間の延長が認められ、心機能の改善も認められている。以上の結果をまとめ、現在論文作成中である。
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