研究課題/領域番号 |
18K08050
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
盛田 俊介 東邦大学, 医学部, 教授 (60286094)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心腎連関 / インドキシル硫酸 / 芳香族炭化水素受容体 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)は、心血管病(CVD)の独立した危険因子であり両者の関連は心腎連関として捉えられており、CKD患者では心血管事故を未然に防ぐ治療戦略が重要である。我々はこれまでに、芳香族炭化水素受容体(AhR)が、尿毒症物質であるインドキシル硫酸(IS)の作用点として血管内皮細胞の障害に関わることをin vitroで明らかにした。本研究では、ISによる心筋の線維化にIS-AhR経路の活性化が関わっているか否かを検証するとともに、IS-AhR経路遮断による心腎連関抑制を臨床応用に展開するための基盤となる研究を行う。 今年度in vitroの研究で、ヒト心筋細胞(HCM)を用いたIS-AhR経路の心筋への影響についての検討は継続中である。一方、ヒト大動脈血管内皮細胞 (HAEC) を用いた検討では、AhRのリガンドとして働くクルクミン、レスベラトロール、ケルセチンを使用してISによるAhRの活性化で発現が増強するCYP1A1と1B1のmRNAの発現を検討し、ケルセチンがISによるCYP1A1と1B1のmRNAの増強を抑制し、血管内皮障害の指標としたMCP-1の発現を抑制することを明らかにした。これらの結果から、5/6腎摘腎不全マウスを作成し、ケルセチン投与による心血管系への影響の検討を開始した。5/6腎摘腎不全マウスでは血中BUN濃度の上昇を認め腎機能低下が確認された。またIS投与群では非投与群と比較してBUNに有意差はなく、IS投与による腎機能低下は認めなかったが、血中IS濃度は有意に上昇していた。ケルセチン投与では、腎機能の改善、血中IS濃度の低下は認めなかった。現在、実験終了時に行ったマウスの心臓超音波検査データの解析、心血管組織におけるISによる障害の有無ならびにケルセチンがISによる心血管系組織の傷害を解除しているか否かを大動脈と心臓組織のそれぞれで解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の研究計画であるヒト心筋細胞を用いたIS-AhR経路の心筋への影響とそのメカニズムの解析については、今年度も遅れが生じている。一方、血管内皮細胞を用いた研究は順調に推移し、動物実験に使用可能なポリフェノール類の候補としてケルセチンを見いだした。これに伴い、5/6腎摘腎不全マウスを作成して当初の予定通り動物実験を開始し、現在解析を継続中である。 以上の結果から本研究の進捗状況を「やや遅れている。」と判定した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、ヒト心筋細胞を用いたIS-AhR経路の心筋への影響とそのメカニズムの解析を進める。また、5/6腎摘腎不全マウスについて生体におけるIS-AhR経路の心血管組織への影響を明らかにするとともに、ケルセチンによる作用が、IS-AhR経路によって惹起される心血管系組織の障害を解除できる可能性について継続して検討を行う。さらに、これらの検討結果をまとめ論文発表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度行った動物実験の病理標本作製に関わる経費が使用されなかった事、研究発表のための旅費が使用されなかった事により当該助成金が生じている。 次年度、現在進行している病理標本作成費、遅れている心筋細胞実験についての経費、学会発表の費用等として、次年度研究計画に計上している経費と共に使用していく予定である。
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