研究課題/領域番号 |
18K08052
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研究機関 | 明治国際医療大学 |
研究代表者 |
浅沼 博司 明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 教授 (20416217)
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研究分担者 |
高濱 博幸 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (10570301)
北風 政史 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究開発基盤センター, 部長 (20294069)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心不全 / 薬物治療 / トランスレーショナル研究 |
研究実績の概要 |
本年度は、選択的ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬の投与が、心不全の発症および進展を抑止するか否かを、大動物非虚血性心不全モデル(右室高頻度ペーシング)で検討した。対照群では、収縮期血圧は、ペーシング開始前とペーシング6週後で比較すると変化は認められなかったが(124.7±6.5 mmHg→122.5±3.9 mmHg)、平均肺動脈圧は、ペーシング開始前に比し、ペーシング6週後に上昇し(9.7±1.9 mmHg→22.0±5.4 mmHg)、肺動脈楔入圧も同様に上昇した(3.5±1.6 mmHg→15.2±5.2 mmHg)。一方、SGLT2阻害薬を心不全が発症したペーシング5週目から2週間経口投与することにより、収縮期血圧は、ペーシング開始前に比し、ペーシング6週後に低下が認められ(121.3±16.8 mmHg→102.3±15.6 mmHg)、平均肺動脈圧(9.8±1.7 mmHg→12.3±3.8 mmHg)および肺動脈楔入圧(3.5±1.3 mmHg→7.5±2.9 mmHg)は、上昇が抑制された。また、対照群における左室拡張末期径は、ペーシング開始前に比し、ペーシング6週後に拡大し(3.2±0.2 cm→3.8±0.3 cm)、左室駆出率は低下した(74.5±3.7 %→ 30.2±2.6 %)。SGLT2阻害薬を心不全が発症したペーシング5週目から2週間経口投与することによっても、左室拡張末期径の拡大は抑制されなかったが(3.2±0.1 cm→3.8±0.3 cm)、左室駆出率の低下は抑制された(74.7±2.0 %→40.7±1.8 %)。これらの結果より、大動物心不全モデルにおいて、SGLT2阻害薬を投与することにより、血行動態と心機能が改善されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、前臨床基礎研究として、詳細な血行動態の評価が可能な大動物心不全モデルにおいて、SGLT2阻害薬投与による心不全発症・進展抑止の立証およびそのメカニズムの検討を行うことで、新しい心不全治療法を開発することを目的とする。 本年度の研究実施計画は、非糖尿病モデルにおける選択的SGLT2阻害薬の心不全改善効果を大動物心不全モデルで検討することであったが、研究実績の概要に示したように、大動物右室高頻度ペーシングによる心不全モデルにおいて、選択的SGLT2阻害薬投与が心不全の病態を改善することを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、前臨床基礎研究として、詳細な血行動態の評価が可能な大動物心不全モデルにおいて、SGLT2阻害薬投与による心不全発症・進展抑止の立証およびそのメカニズムの検討を行うことで、新しい心不全治療法を開発することを目的とする。 昨年度は、1) 非糖尿病心不全モデルにおいて、SGLT2阻害薬を心不全発症後であるペーシング5週目から2週間経口投与することにより、心不全の病態を改善することを明らかにすることができたことから、今後は、2) SGLT2阻害薬を心不全発症前であるペーシング開始時から6週間経口投与することにより心不全の発症を抑止できるか否かを明らかにし、3) 糖尿病(alloxan投与)心不全モデルにおいても、非糖尿病心不全モデルと同様にSGLT2阻害薬が心不全の病態を改善するか否かを検討し、4) 非糖尿病心不全モデルおよび糖尿病心不全モデルの双方において、心不全の病態を改善するメカニズムを検討する。具体的には、血液一般、血糖値、インスリン値、遊離脂肪酸値、乳酸値、ケトン体値、クレアチニン値、尿素窒素値、心臓および腎臓の組織を採取して組織学的検討とアポトーシスの評価を行うとともに、SGLT1(心臓・腎臓)、SGLT2(腎臓)およびadenosine monophosphate-activated protein kinase (AMPK)発現レベルの変化の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、動物購入費として500,000円、動物用体内式リード購入費として350,000円を計上していたが、評価に使用した超音波装置に不具合が生じ、調整に時間を要したことで、わずかながら予定通りに実験を進めることができず、使用する動物数および動物用体内式リード数が減ったため。超音波装置の不具合が解消されたことで、来年度は、本年度に実施できなかった頭数を追加して、研究をすすめる予定である。
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