研究課題
平成30年度は、選択的ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬が心不全の進展を抑止するかを検討する目的で、大動物右室高頻度ペーシング心不全モデルにおいて心不全発症後からSGLT2阻害薬を投与した。その結果、対照群に比し、平均肺動脈圧および肺動脈楔入圧上昇が抑制され、左室収縮性低下が抑制されることを明らかにした。令和元年度は、SGLT2阻害薬が心不全の発症を抑止するかを検討する目的で、心不全発症前からSGLT2阻害薬を投与した。その結果、平均肺動脈圧および肺動脈楔入圧上昇が抑制され、左室拡張末期径の拡大および左室収縮性低下が抑制されることを明らかにした。これらの結果から、SGLT2阻害薬は、心不全の発症および進展を抑止することが明らかとなった。本年度は、SGLT2阻害薬の心不全発症および進展抑制作用のメカニズムについて検討を行った。不全心筋では細胞内Na+、Ca2+が上昇し、ミトコンドリア内Ca2+が低下することが知られているが、SGLT2阻害薬投与によりsodium-hydrogen exchanger 1 (NHE-1)の発現が抑制されることが明らかとなったことから、SGLT2阻害薬は不全心筋において、細胞内Na+、Ca2+の上昇およびミトコンドリア内Ca2+の低下を抑制することで心不全の病態を改善させることが示唆された。また、AMP-activated protein kinase (AMPK)は心筋を含む様々な組織で発現し、ストレス状況下でのエネルギー代謝の調節において中心的な役割を担っていることが報告されていることから、SGLT2阻害薬のAMPK活性に及ぼす効果を検討した。その結果、SGLT2阻害薬投与によりAMPKが活性化されることが明らかとなり、心不全の発症および進展が抑止されることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
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