2020年度も引き続き7日間の血糖+中性脂肪のスパイクが骨髄細胞の老化(造血幹細胞数の増加、造血幹細胞の細胞周期の活性化、骨髄球系に偏った分化、分化能の低下)を 誘導する機序について検討を行った。 7日間の血糖+中性脂肪のスパイクを作成したマウス、7日間の血糖のみのスパイクを作成したマウス、糖や脂肪の代わりにPBSを投与したマウスからそれぞれLSK細胞を採取して、PBS投与群をコントロール群としてRNA sequence analysisを行った結果、7日間の血糖+中性脂肪のスパイクと7日間の血糖のみのスパイクはLSK細胞内において大きく異なった遺伝子発現調節を行うことがわかった。パスウェイ解析の結果から 7日間の血糖+中性脂肪のスパイクはヘテロクロマチンを減少させてLSK細胞の自己増殖や分化に影響を及ぼすことが示唆されたこともあって、RNA sequence analysisの結果に基づいてリジン脱メチル化酵素に着目し実験を開始したところ、プレリミナリーな結果ではあるが、リジン脱メチル化酵素を阻害することによって7日間の血糖+中性脂肪のスパイクによる骨髄細胞の老化誘導を抑制できる可能性が示唆された。 また、代謝の改善が、老化の表現型を示す骨髄細胞にどのような影響を与えるのか確認する目的で、7日間の血糖+中性脂肪のスパイクを作成したマウスと糖や脂肪の代わりにPBSを投与したマウスをその後3週間通常の飼育状態に戻し、骨髄細胞の解析を行うと7日間の血糖+中性脂肪のスパイクを作成したマウスでは老化の表現型が消失しており、代謝の改善が骨髄細胞の若返りを誘導する可能性が示唆された。
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