研究課題/領域番号 |
18K08055
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
辻野 健 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (90283887)
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研究分担者 |
内藤 由朗 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10446049)
増山 理 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (70273670) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心不全 / 貧血 / 腎不全 / 心腎貧血症候群 / フマル酸ジメチル / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
慢性心不全患者において貧血の合併は予後不良の因子であるが、発症機序は多因子であり、十分解明されたとはいえない。我々は慢性心不全に合併する貧血の主要な原因が赤血球の血中半減期の短縮であることを明らかにした。そこで本研究の目標は、赤血球半減期の短縮の原因を、赤血球側の要因と赤血球を破壊する側の要因の両面から検討することである。我々は以前に、赤血球側の要因として、eryptosis(赤血球のapoptosis様プログラム細胞死)の関与を明らかにした。その誘引として、赤血球内Ca2+の上昇、赤血球内グルタチオンの枯渇、酸化ストレス、脂質過酸化、セラミドの蓄積等が知られている。昨年度は、心不全と貧血を合併する病態モデルであるDahl食塩感受性高血圧ラット(DS)での検討を行ったところ、抗酸化経路を活性化するNuclear factor (erythroid derived-2)-like 2(Nrf2)の活性化薬であるフマル酸ジメチル(DMF)が貧血の予防に有用である可能性が示唆されたので、それを確認する実験を行った。①コントロール群、②HS群(高食塩(8%NaCl))、③HS+フマル酸ジメチル(DMF)群(高塩食+DMF(90mg/kg)) の3群で検討した。その結果、HS群で赤血球内酸化ストレス(2,7-DCFDAで測定)が増加しており、HS+DMF群ではそれが改善していた。またDMFはDSラットの生存率を有意に改善した。このことから、慢性心不全における酸化ストレス亢進を改善する薬剤として、DMFが有用である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は慢性心不全モデルであるDahl食塩感受性ラット(DSラット)に合併する貧血の主要な原因が赤血球の血中半減期の短縮であることを明らかにした。そこで本研究の目標は、赤血球半減期の短縮の原因を、赤血球側の要因と赤血球を破壊する側の要因の両面から検討することである。我々は以前に、赤血球側の要因としてeryptosis (赤血球のapoptosis様プログラム細胞死)の関与を明らかにした。その誘引として、赤血球内Ca2+の上昇、赤血球内グルタチオンの枯渇、酸化ストレス、脂質過酸化、セラミドの蓄積等が知られている。昨年度は、心不全と貧血を合併する病態モデルであるDahl食塩感受性高血圧ラット(DS)での検討を行ったところ、抗酸化経路を活性化するNuclear factor (erythroid derived-2)-like 2(Nrf2)の活性化薬であるフマル酸ジメチル(DMF)が貧血の予防に有用である可能性が示唆されたので、それを確認する実験を行った。DMFが赤血球内の酸化ストレスを改善することを統計学的な有意差をもって確認することができた。さらにDMFがDSラットの生存率を改善することを示すことができた。DMFはすでに多発性硬化症の治療薬として承認されている薬剤であるので、DMFのドラッグリポジショニングの可能性を得られたことは意義深いことと考える。したがって研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
我々は今年度、DSラットに食塩を負荷し高血圧性心不全を惹起すると赤血球内酸化ストレスが増加すること、DMFはそれを改善する傾向にあることを見出した。またDMFの生存率改善効果を確認することができた。しかし、DMFの作用点は必ずしも赤血球とは限らない。腎臓や心臓の酸化ストレスを緩和することにより、心不全が改善され、それに伴って赤血球の酸化ストレスが軽減された可能性もある。そこで次年度は、心臓の臓器障害(心肥大、心臓の繊維化)、腎像の臓器障害(糸球体硬化、腎臓の繊維化、尿細管障害)について検討し、DMFのdrug repositioningにつなげるためのデータを収集したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延防止のため、学生の研究指導を縮小したことにより、2020年前期に予定していた実験ができなくなったため、次年度使用額が生じた。2021年に入ってから研究室の活動が通常に戻っているので、繰り越した研究費はすぐに使用できる予定である。
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