心不全が新規に出現したり増悪するような状況下では心筋細胞のDNA障害が出現していることが知られており、非ヒストン核蛋白であるHigh mobility group box 1 (HMGB1)は、DNA傷害に対する修復機構に関与するかについて検討を行った。この検討において、HMGB1が、心筋細胞アポトーシスを抑制すること、心筋細胞肥大も抑制することを見出している。さらに、カテコラミン、ドキソルビシンなどの様々な刺激による心筋障害を核内に存在するHMGB1が抑制することを明らかにしている。この抑制効果は単純に細胞内シグナルでなく、心筋へかかる酸化ストレスを始めとする各種刺激から心筋を直接保護する作用があることを示唆している。その機序の一つとして、HSP27の発現、ミトコンドリア機能の保護作用が考えられるが、そのほかに心筋細胞由来の心不全進行や臓器連関に関するmicroRNAの発現そのものも抑制している可能性を想定した。そこで、心不全患者の心筋細胞でmicroRNAの発現も調節している可能性を検討している。現段階では、心不全患者の血中microRNAの検討を行い、いくつかの候補microRNAを選別した。動物モデルでも同様の結果が得られることが確認できれば、引き続き核内HMGB1とmicroRNA発現の関連性を明らかにしていくことができる。そこで、マウスを用いて、心肥大モデルを大動脈弓縮窄モデルを用いて作成した。大動脈縮窄により、これまでの報告通り心重量の増加、心エコーでは左室壁肥大、心内腔の拡大と壁運動の低下を認めた。ヒト血中で確認したmicroRNAの発現をみたところ、マウス心不全モデルでも同様な変化を認めているため、引き続きHMGB1との関連性を明らかにしていく。
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