前年度までの研究でヒト副腎皮質由来培養細胞においてトルバプタンがV2受容体非依存性に副腎におけるAngII誘発性アルドステロン産生を抑制することが示唆された。また、AngII持続投与下のSprague-Dawleyラットでトルバプタン投与により血中アルドステロン濃度上昇、副腎アルドステロン濃度上昇およびCYP11B2蛋白発現量増加を抑制することが示された。令和3年度は慢性心不全モデルとしてLewisラットを用いた自己免疫性心筋炎モデルにてトルバプタンのアルドステロン産生抑制効果の検討を開始した。 既報を基に5週齢のラットに0.2mgから0.4mgのブタ心筋ミオシンを皮下注射し、6週間後に左室内径短縮率(FS)が40%未満を満たした個体を心不全モデルとして採用した。心不全モデルでは心重量/脛骨長比の増加(コントロール群 0.194g/cm vs 0.2567g/cm)、BNP-45の増加(コントロール群 0.059 pg/mL vs 0.343pg/mL)を認めた。しかし、FS 40%未満となったモデルは78%と既報の100%に比し低く、平均FS 37.5%であった。また、既報の心不全モデルでは死亡率20~44%であったが本研究では0%であった。 安定的な左室駆出率の低下した心不全モデル作成のため、ブタ心筋ミオシン量の調整および同時に投与する結核死菌(M. tuberculosis H37Ra)の増量を行った。8週齢のLewisラットを3群に分け、それぞれ0.25mg、0.5mg、1.0mgのブタ心筋ミオシンを皮下注射した(各n=2)。1.0mgを投与した群のみでFS 20.5%と高度な心機能障害および心嚢水貯留を確認した。上記結果よりブタ心筋ミオシン 1.0mgで作成したモデルを慢性心不全モデルとして採用した。 現在は同週齢のラットを正常群、無治療心不全群、低用量Tolv治療群(0.01% Tolvaptan混合食)、高用量Tolv治療群(0.05% Tolvaptan混合食)の4群に振り分け、治療前後でのアルドステロンおよびアルドステロン合成にかかわる酵素であるCYP11B2などの発現量の確認を行っている。
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