研究実績の概要 |
生後不変であると考えられていた心筋細胞が再生しているという報告(Bergmann O. et al Science, 2009)がされているが、その再生能力は極めて乏しく心筋梗塞や心不全を自然に克服する能力はなく、心臓は再生医療の重要なターゲットである。現在、心筋再生療法としてヒトiPS細胞やES細胞から誘導される心筋細胞を用いた細胞移植が、心臓移植に代わる再生医療として臨床応用が試みようとされている。現在、治療対象は基本的に心移植を待つしかない重症心不全患者に対してであるが、今後、治療対象が重症心不全にだけ限られるものではなく、根本的な治療法がない進行する心不全の患者に対しても応用可能となるような治療法を開発することが期待される。そこで、移植細胞源として、前駆細胞に着目しCD82陽性心筋特異的前駆細胞を同定した。(特許第5924750号)(Cell Reports 2018)。前駆細胞としては、今までに数々の心血管前駆細胞が同定されているが、分化能として心筋細胞や血管・間葉系に分化する能力を有するが、生体内で安定して心筋細胞に分化せずむしろ血管・間葉系に分化する傾向を示すため、心筋再生能は乏しいと考えられる。一方、CD82陽性心筋特異的前駆細胞は、心筋細胞のみに分化することが運命決定されており、生体内で高率に安定して心筋細胞に分化することができるという特長を有している。そこで、生体内で高率に心筋細胞に分化し、多数の心筋を産生する能力を有するCD82陽性心筋特異的前駆細胞を用い、進行性の病態に対して効果的に心筋を再生し機能改善をもたらす治療法になるのではと考えられた。本研究では、まず小動物(特にラット)を用いて移植効果の検討を行い、2x106個また5x106個の移植細胞数で1か月において心機能改善効果を示した。
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