研究課題/領域番号 |
18K08068
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
芦田 昇 京都大学, 医学研究科, 講師 (00538978)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大動脈弁狭窄症 / 石灰化 / 筋線維芽細胞 |
研究実績の概要 |
新規血管石灰化マウスを用いた大動脈弁狭窄症のメカニズム解析のため、我々は本期間において以下の研究を行った。 1) マウス大動脈弁石灰化モデルの組織学的評価:野生型マウスにおいてエコーガイド下にPCI用ガイドワイヤーを頸動脈から左心室まで挿入し、それを前後回転させて大動脈弁に機械的刺激を加えることにより大動脈弁狭窄を作成し、その組織学的評価を行ったところ、大動脈弁の肥厚と石灰化を認めた。このことは本モデルマウスが成功裡に作成できたことを示している。しかしながら手術による死亡が相当数にあり、手技のさらなる熟練が必要と思われた。 2)心臓筋線維芽細胞の培養系の確立とその観察:昨年度において我々はマウス皮膚から線維芽細胞を培養し、TGFβで刺激することにより筋線維芽細胞に分化させる系を確立させたが、最近の研究によると線維芽細胞は臓器によってかなり特徴を異にしていることが報告されている。このため本期間では心臓筋線維芽細胞の培養系の確立を行ったところ、首尾よくこれを達成することができた。興味深いことに、心臓線維芽細胞は皮膚線維芽細胞と異なって固い面において培養されても自然に筋線維芽細胞に分化することはなく、そのためにはTGFβの刺激が必要であった。そこでIKKβノックアウトマウスおよび野生型マウスからの培養皮膚線維芽細胞にTGFβ刺激を行い比較したところ、IKKβノックアウトマウス線維芽細胞においてSM22αの発現が有意に亢進していることを観察した。このことはIKKβがノックアウトされることで筋線維芽細胞への分化が促進されることを示しており、本研究におけるメカニズムとして重要であると思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス大動脈弁石灰化モデルの成立を組織学的に確認することができたこと、心臓筋線維芽細胞の培養系を確立してその皮膚筋線維芽細胞との相違を見出したこと、またIKKβノックアウトによる筋線維芽細胞への分化促進を観察したことは、本研究において大きな進展であったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り研究はおおむね順調に進展していると考えらえるため、予定どおりin vivo, in vitroでの解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度において、消費金額の少ないin vivoでの実験を予定比重よりも多く行ったため。来年度以降はさらなるin vivo実験に加えてin vitro実験が増加すると思われ、抗体などの高額消耗品の使用が増えると考えられる。
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