研究課題
DSG2-R119X-homo変異を有する拡張型心筋症症例由来のiPS細胞およびそのアイソジェニックコントロール細胞を作成し、それぞれから心筋細胞を分化誘導して、詳細な表現形の検討をおこなった。今年度は、心筋細胞の組織化を行い表現型の検討をおこなった。3次元自己組織化リングを作成し、micron-scale mechanical-testing systemを用いて組織の収縮力を測定したところ、DSG2-R119X-homo変異を有する心筋組織ではアイソジェニックコントロール心筋組織と比較して、収縮力が有意に低下していた。また、電子顕微鏡で微細構造を検討したところ、DSG2-R119X-homo変異心筋組織では、デスモゾーム構造の破壊と細胞質内への蓄積が認められた。次に、治療への応用を念頭に、これらの構造及び機能異常がdesmoglein 2の後天的な補充で改善しうるかどうかについて検討した。desmoglein 2を発現するアデノ随伴ウイルスベクターを作成し、iPS細胞から分化させた心筋細胞に感染させてdesmoglein 2を強制発現させ、これらの細胞を上記の3次元自己組織化させて表現型を検討した。その結果、コントロールウイルスベクター(EGFPを発現するベクター)を感染させた細胞と比較し、desmoglein 2発現ベクターを感染させた自己組織化リングにおいて、有意に収縮力が増加していた。これらの結果は、desmoglein 2を後天的に補充することによって病態が改善する可能性を示唆しており、治療への応用の道筋を開くことが期待される結果である。
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Scientific Reports
巻: 18 ページ: 15348
10.1038/s41598-020-72216-y.