研究実績の概要 |
1)Brugada症候群でVF発症前後の心電図変化が確認可能であった群と対照群として2年以上不整脈発生がないことが確認されている無症候例を比較した。経年的なQRS幅延長がVF発生と関連していた。経年的な脱分極異常進行(QRS幅・棘波増大)および再分極不均一性の増大(Tpe延長)がVF発生に関与することを示した。 2)i)I群抗不整脈薬pilsicainide負荷試験:Brugada症候群245例で予後との関連について検討した。薬剤負荷後の心電図指標では,PQ・QRS間隔延長,ST高増大,心室性不整脈発生が経過中のVF発生の予測因子であった。多変量解析で有症候性例(ハザード比HR 3.28),負荷後ST増高(≧0.3mV,HR 2.8),薬剤誘発性心室性不整脈(HR 3.62)が独立した危険因子であった。薬剤による不整脈基質の顕在化が,経過中のVF発生と関与していることを示した。 ii)運動負荷試験による自律神経変動:運動負荷後のST変化,心室期外収縮PVC発生について検討した。運動負荷回復期では交感神経活性の消退に伴い,迷走神経活性亢進がみられる。この時相でST上昇の増悪,PVC出現する例では,VF発生リスクが高く,自律神経系の修飾で不整脈基質を顕在化することが可能であった。 3)無症候例(125名)のVF発症予測因子を検討した。経過観察期間中に10例で新規VF発症がみられた(発症率0.7%/年)。心電図指標ではTpe間隔延長及びQRS棘波の二因子がVF発症の予測因子であった。プログラム刺激PESでVFが誘発された場合,経過中のVF発症リスクは13倍であった。心電図異常が無い,またはPESでVFが誘発されない場合の発症率は0~0.1%/年,心電図異常1因子+誘発ありは1.3%/年,心電図異常2因子+誘発ありで4.4%/年と、無症候例でのリスク層別化が可能であった。
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