研究課題/領域番号 |
18K08079
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
三浦 哲嗣 札幌医科大学, 医学部, 教授 (90199951)
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研究分担者 |
三木 隆幸 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00336405)
丹野 雅也 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00398322)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | RIP1 / mTORC1 / TFEB |
研究実績の概要 |
今年度は、ネクロプトーシス誘導に寄与する受容体リガンドの探索と、ネクロプトーシス制御タンパクであるRIP1とオートファジー制御タンパク複合体であるmTORCとの関連の解析を平行して行った。また、慢性心不全の臨床例からの心筋生検標本を用い、caspase-8とMLKL発現と心エコー検査で計測した心機能、左室理モデリングとの関連を後ろ向きに解析した。 ネクロプトーシス誘導リガンドについてはTNF-alphaの役割を確認し、アンギオテンシンIIについては否定的な成績を得ており、他の受容体リガンドについて探索を継続中である。 RIP1とmTORCの関連について以下のような新たな知見を得た。培養心筋細胞を用いた実験から、1) mTORC1活性の抑制は、RIP1-Ser166リン酸化を低下させるだけでなくRIP1活性を負に制御するRIP1-Ser320活性を亢進させ、これら両者によって有意なRIP1-RIP3結合抑制が起こること、2) mTORC1活性抑制によるRIP1活性抑制は、リソソーム機能を制御する転写因子であるTFEBを活性化し、リソソームとオートファゴソームの融合を促進すること、3) mTORC1活性抑制は、1)2)の機序によって心筋細胞をネクロプトーシスによる細胞死から有意に保護すること、4)TNF-alpha受容体からRIP1活性化までのシグナル伝達やp53発現亢進は、mTORC1抑制の影響を受けず、その細胞保護効果に関与していないこと、が明らかとなった。RIP1-RIP3結合がmTORC1阻害によって抑制されることは、ラットのin vivoの急性心筋梗塞モデルにおいても、培養心筋細胞での実験結果との一致した結果が得られることを確認した。 心筋生検標本を用いた検討からは、心筋細胞におけるcasapse-8の発現低下と左室内腔拡大との関連が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネクロプトーシス誘導リガンドに関する探索は計画よりやや遅れているが、RIP1活性に焦点をあてたネクロプトーシスとオートファジーシグナルの関連、ネクロプトーシス誘導シグナルによるオートファジー阻害機序の解析については概ね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、1) ネクロプトーシス誘導リガンドの候補のうち、炎症性サイトカイン(interleutin [IL]-6、IL-12、IL-17、IL-23)、DAMPs (high-mobility group box 1、macrophage inhibitory factor、S100A8/S100A9)の役割を検討すること、2)ネクロプトーシスによるオートファジー阻害の機序について、オートファゴソームとオートリソソームの癒合に関与する蛋白であるStx17、VAMP7、VAMP8、SNAP29のネクロプトーシスによる変化を、リン酸化RIP3ならびにp62との機能関連を明らかにすること、3) オートファジーの障害がネクロプトーシスを促進する可能性について、Atg5ノックダウン、bafilomycin A1処理、クロロキン処理、といった異なる手法でオートファジーを阻害した場合に、ネクロプトーシス制御蛋白やcomplex I、necrosomeの形成が修飾されるのか否かを明らかにすること、以上3項目を目標に研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養心筋細胞を用いて、ネクロプトーシスの誘導に関与し得るリガンドを網羅的に探索する実験の進捗が遅れたため、その実験用の抗体分として予定していた消耗品費が未使用となった。
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