研究課題
本研究では、心筋細胞におけるネクロプトーシス誘導シグナルの起動がRIP1-RIP3-p-MLKLシグナルによる細胞死の誘導と同時に、リソソームのマスター転写因子であるTFEBの核移行をRIP1活性依存性に抑制することによってオートファジーを阻害することが示された。mTOC1の抑制は、RIP1-Ser166リン酸化低下とRIP1-Ser320リン酸化亢進によるRIP1活性低下をもたらし、TFEB機能回復を介してオートファジーの回復と細胞死を抑制した。ミトコンドリアへのネクロプトーシス誘導シグナルの影響を解析した結果、mitofusin(Mfn)の発現低下、Drip1リン酸化によって分裂が亢進することが示唆された。そのMfn発現の低下は経時的に亢進へと転じ、ミトコンドリア癒合の促進はネクロプトーシスへの耐性を高めたことから、ネクロプトーシス誘導シグナルがオートファジーを阻害する一方で、ミトコンドリア・ダイナミクスを介して心筋細胞の適応を誘導すると考えられた。ネクロプトーシス誘導リガンドとして、TNF-alpha以外の候補としてRANKL, HMBG1, など多く検討したが、TNF-alpha以上の効果を認めなかった。TNF-alphaによるネクロプトーシス誘導は、TNF-alpha mRNA発現を有意に増加させ、シグナル増幅能があることが示唆された。拡張型心筋症の心筋生検標本の免疫染色による解析から、p-MLKLの発現レベルと左室機能障害との関連が示唆された。本研究の結果から、慢性心不全における心筋細胞死には、TNF-alphaをリガンドとしたネクロプトーシス誘導シグナルによるp-MLKLを介したネクロプトーシスに加えTFEB機能抑制を介したオートファジー阻害による細胞死が重要な役割を有しており、TFEBと、ミトコンドリア・ダイナミクスが新たな治療標的となる可能性が考えられた。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
Autophagy
巻: 17 ページ: 1~382
10.1080/15548627.2020.1797280
Journal of Molecular and Cellular Cardiology
巻: 154 ページ: 21~31
10.1016/j.yjmcc.2021.01.002
Journal of Pharmacological Sciences
巻: 145 ページ: 187~197
10.1016/j.jphs.2020.12.001
Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular Basis of Disease
巻: 1866 ページ: 165851~165851
10.1016/j.bbadis.2020.165851