代謝障害は肺高血圧症に関連していることが広く認識されている。一方、マウスの低酸素症によって誘発された肺動脈圧の上昇は、再酸素化の下で正常な圧力に戻ることが知られている。しかしながら、代謝障害が肺動脈のリバースリモデリングにどのように影響するかはまだ不明である。この研究では、低酸素症誘発性肺高血圧症のマウスにおける肺動脈圧の低下と肺動脈のリバースリモデリングに対する高脂肪食(high fat diet; HFD)の効果をk検討した。8週齢の雌のC57 / Bl6マウスを肺高血圧症の誘発のために低酸素症(4週間10%酸素)に曝露後、正常酸素状態に戻し、通常の食事(normal diet; ND)グループとHFDグループに分け、それぞれの食事を12週間与えた。 その結果、右心室収縮期圧と右室肥大指標のFulton indexは、再酸素化後12週間で、NDグループよりもHFDグループで有意に高値であった。肺動脈の中膜肥厚はHFDグループでより亢進していた。 HFDグループの肺組織におけるカスパーゼ3活性は低下しており、TUNEL染色により、肺動脈平滑筋細胞のアポトーシスはHFD群で抑制されていることを示した。さらに、肺高血圧症の発症に抑制的に働くproliferator-activated receptor-γおよびアペリンの発現レベルは、NDグループよりもHFDグループの方において低下していることを示した。 また、marix metalloprotaseは右室圧収縮期圧と逆相関関係であることが示された。 本研究結果は、2020年日本循環器学会総会、アメリカ心臓病学会において発表し、現在論文投稿中である。
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