研究課題
前年度施行したDNAアレイの結果をもとに伸展張力が線維芽細胞に及ぼす効果に関してDAVIDによるKEGG pathwayでシグナルを予想した(バイオインフォマッティクス)。その結果、線維化に関連するTGFb/SMADシグナル以外にWNT/b-Cateninのシグナルが伸展張力に関与していた。この予想をもとに筋線維芽細胞に定量的な伸展張力を負荷して蛋白の発現レベルをウェスタンブロッティングで定量すると、SMAD2とb-Cateninの発現がともに有意に減少した。前年度伸展張力を感知する分子としてTRPV4を同定しており、TRPV4の下流にSMAD2とb-Cateninが関与しているかどうかsiRNAを用いてTRPV4の発現をノックダウンさせたところ、basalの発現でSMAD2とb-Cateninともに減少し、かつ伸展張力に応答しなかった。このことは筋線維芽細胞はTRPV4が伸展張力を感知し、SMAD2とb-Cateninのシグナルを介して脱分化させることを示唆する。次にマイクロRNAが伸展張力による筋線維芽細胞の脱分化に関与していないか検討した。aSMAの3'UTR領域に結合しうるマイクロRNAをTargetScan Humanを用いて検討したところmiR-140-3p.1とmiR-155-5pが予想された。そこで筋線維芽細胞に定量的な伸展張力を負荷してリアルタイムPCRでマイクロRNAの発現レベルを定量したところ、伸展張力の強さ依存性にmiR-140-3p.1の発現レベルが増大した。一方、miR-155-5pの発現レベルはbasalで定量できないほど低値であった。miR-140-3p.1の阻害剤を用いてaSMAの蛋白の発現レベルを検討したところ、basalでは変化なく、伸展張力ではさらに減少傾向であり、miR-140-3p.1の脱分化への関与は低いことが分かった。
2: おおむね順調に進展している
伸展張力が筋線維芽細胞を脱分化させるメカニズムに関して、TRPV4が伸展張力を感知してSMAD2とb-Cateninのシグナルを介して脱分化させることを新たに同定した。また、マイクロRNAの関与も検討した。
伸展張力が蛋白の発現に及ぼす効果に関して質量分析計を用いて網羅的に検討し、伸展張力に応答する新規蛋白を同定する。
質量分析計を用いて蛋白の網羅的な定量を検討しているが、試薬が今年度内に入荷しないため。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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