研究課題/領域番号 |
18K08086
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
高橋 健 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (70343481)
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研究分担者 |
田久保 憲行 順天堂大学, 医学部, 准教授 (20306583)
田中 綾 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70334480)
板谷 慶一 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70458777)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 1型糖尿病 / 心室拡張能 / 拡張早期左室内圧較差 / 動物実験 / 膵島破壊モデル / 心拍変動 |
研究実績の概要 |
計画書にあるように、1 型糖尿病モデル作成の確立を目指して、東京農工大学農学研究科において、実験用ラットを用いストレプトゾシンの静脈投与により、膵島破壊による1型糖尿病モデルを作成することを試みた。2019年度は下痢が原因の脱水による死亡症例が頻発したためモデル作成が難渋したが、水分管理の厳重化、投与方法の分割化、血糖測定の頻回化などの工夫の結果、生存させることに成功した。その結果、糖尿病型ラットは、従来からの超音波指標の低下に加え、今回新たに開発した拡張早期左室内圧格差も、対象症例と比較して低下していた。更に病理解剖により左室心筋内に繊維化が発症したことが確認され、Journal of Medical Ultrasonicsに投稿し、2020年7月に掲載された。 更にこの動物実験を発展させ、同様にストレプトゾシンによる1型糖尿病モデルにおいて、能動的弛緩の遅延と、乳頭筋部から心尖部の拡張早期左室内圧較差が低下していることも明らかにし、拡張早期左室内圧較差が鋭敏な左室拡張能指標であることをComparative Medicineに2020年12月に掲載された。 実際の1型糖尿病患者については、パイロット研究として、拡張能に極めて重要である左房機能の解析を行い、多くの左房壁伸縮機能が患者群で低下していることを明らかにし、Pediatric Diabetes に2021年3月に掲載された。 以上動物実験においては膵島破壊モデルの実験系の確立と、実際の患者における心臓拡張機能評価のパイロット研究を論文として報告したことが、2020年度の研究業績である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、患者に心エコーを行うのと同時に心臓MRIも施行し、非侵襲的に心筋の組織性状も評価することが研究計画の重要な内容であった。しかしながら、COVID19(新型コロナウイルス)の流行により、医療を取り巻く状況が大きく変化した。MRIは長時間密室に患者が滞在することになり、COVID19の院内感染の危険因子となる。そのため臨床的に必須であるMRI検査以外は、実質上実行が不可能となった。そのため1型糖尿病患者群におけるMRI検査は進んでいない。 更に共同研究を行っている東京農工大学においてもCOVID19の流行により、一時的に動物実験が中止された。そのため、ラットの実験も実行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
現在もCOVID19流行により、東京には非常事態宣言が発令されている状況にあり、今後も暫くはMRI検査は不可能であると考えらえる。 そこでMRIに代わる検査方法として、24時間心電図による心拍変動解析を行う計画を立て直した。心拍変動解析とは、心機能を制御するシステムである自律神経の状態を評価することにより、心機能よりも上位の循環動態指標を評価する方法である。過去には、心エコーによる最も基本的な心機能指標である左室駆出率よりも、糖尿病患者における予後予測に有用であるとする報告も存在する。また近年、非線形解析法の導入により、以前よりも正確に自律神経機能評価が可能となる解析方法が開発されてきた。 更に心拍変動評価においては、患者との接触は、ホルター心電図を取り付ける短時間のみであるため、COVID19流行時に相応しい、安全な方法である。 以上より、心拍変動解析を、新たに当研究に取り入れる方針とした。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行により、中止もしくはWebのみの開催となった。そのため、学会出張費が大幅に減少した。また新型コロナウイルスの流行のため東京農工大の活動が制限され、動物実験数の減少に伴い各種出費が減少した。以上より、予定使用金額に達しなかった。 日常耐水性があるためシャワーを浴びることが可能で、重さ19gと超軽量であり、3日間連続で使用が可能な新たなホルター心電計COR-VIT-R (株式会社ティーベル)が2021年7月に販売開始される。同機種を購入し、日常生活を妨げることなく24時間心電図のデータから心拍変動解析を行う予定である。 解析プログラムはほぼ完成し、従来からの線形解析や周波数解析に加えて、より生体の性質にあった幾何学的解析やフラクタル解析を行う予定である。
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