研究課題/領域番号 |
18K08086
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
高橋 健 順天堂大学, 医学部, 教授 (70343481)
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研究分担者 |
田久保 憲行 順天堂大学, 医学部, 准教授 (20306583)
田中 綾 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70334480)
板谷 慶一 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70458777)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 1型糖尿病 / 心機能 / 心臓超音波 / 流体力学 / 心拍変動 / 自律神経 |
研究実績の概要 |
令和5年度は、当科研費の目的の一つである、”最も鋭敏で正確な新たな心機能検査法”を明らかにすることを実臨床で行うことを目的として研究活動を行った。既に心エコーの指標の中で、従来の検査法よりも、拡張早期左室内圧較差が鋭敏であることは、動物実験で明らかにした。しかし近年心エコーの指標よりも、心拍変動解析により自律神経異常を先に認めるとする報告が数多くある。そのため、当研究においても心拍変動解析に焦点を当て、研究活動を行った。 従来からの心拍変動用のホルター心電計は、ノイズが多く、解析が困難であることが判明したため、新しい解析機器であるCOR-VIT-Rを用いることとした。しかしながら、COVID19流行の影響で、世界的な半導体不足となり最終的な製品の完成が遅れ、実際に計測が開始できたのが、令和5年度以降になった。令和5年度の成果の一つとして、COR-VIT-Rによるデータ収集方法の確立がある。機器の貼り付け位置や、貼り付け方法の工夫により、かなりの確率で良好なデータを収集することが可能となった。 以上の経過より、初めに自律神経の影響を最も大きく受ける起立性調節障害について自律神経異常を明らかにし、日本小児科学会循環動態研究会、起立不耐症学会などで発表した。また先天性心疾患に関しても日本小児科学会で発表し、新生児に関しては日本新生児学会にて発表を行った。更にラットよりも心拍変動解析が行いやすい犬について心拍変動解析を試み、この結果は学術雑誌に英文学術論文として掲載した。 以上、自律神経機能解析の準備について、学会発表および論文作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前述のように、COR-VIT-Rを言う新しい心拍変動計のデータ収集方法の確立を行った。心拍変動解析はデータ解析方法が日進月歩である。しかしながら、市販の解析プログラムには新しい有用な解析プログラムは含まれておらず、最新の方法を用いて解析する場合には、各研究施設で独自のプログラムを開発する必要がある。そのため、この分野では日本の代表的研究者である、大阪大学大学院基礎工学研究科機能創成専攻生体工学領域の清野健教授と共同研究を開始し、自律神経の中でも交感神経と副交感神経を分けて評価可能なプログラムや、心不全の患者層別化に大きな力を発揮する解析プログラムを、我々の解析プログラムに導入することを行った。 更に、心拍変動は基本的に人間の心拍に対して用いられるものであるが、犬や猫にも応用可能であることが確かめられた。 以上より、令和6年度に心拍変動のデータが得られれば、直ぐに解析が可能な状態となっている。
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今後の研究の推進方策 |
自律神経機能は、日中の活動量と睡眠に深く関係があることが明らかになっている。そのため、Actigraphという、学術的に正確性が保証されている活動量計兼睡眠評価が可能な機器を用い、COR-VIT-Rと同時に睡眠の質と量を評価することとした。今後は、ActigraphとCOR-VIT-Rの結果を同期させ、自律神経機能の解析を行うことを計画している。 更に、本来、自律神経は、日常生活における運動量の多さにより大きく左右される指標である。前述の大阪大学の清野教授は、運動量と心拍変動のデータを組み合わせることにより、自律神経機能の開発を行う方法を開発し、既に特許を取得している。今後共同研究によりこの方法も我々の解析プログラムに取り入れることにより、一般的に健常児よりも運動量の少ない1型糖尿病の患児・患者の自律神経機能が正確に計測できるように、解析方法を進歩させる予定である。 更に犬と猫の心拍変動解析は可能となったため、次は当研究計画書にあるラットの心拍変動のデータ収集を試みる段階である。 最終年度であるため、実際の1型糖尿病患児・患者のデータの心機能解析を心エコーと心拍変動解析により明らかし、学会発表および論文発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19の流行により、臨床患者のデータ収集が全体的に送れていた。そのため、2024年度も臨床データの収集を継続し、より多くのデータが集まった今年度の後半に学会発表を行うことにしたため、次年度使用額が発生した。
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