研究課題/領域番号 |
18K08096
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
上田 和孝 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60375798)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / 血管リモデリング / 炎症 / 血管周囲脂肪 / 褐色化 |
研究実績の概要 |
動脈硬化は血管炎症の経時的変化がもたらす慢性炎症疾患の典型といえる。申請者らは、動脈硬化形成時の炎症の主要な舞台として、動脈周囲に存在する脂肪組織である血管周囲脂肪(perivascular adipose tissue; PVAT)に注目した。本研究の特色は、これまで単なる支持組織でしかないと考えられてきたPVATが、血管炎症に秩序をもたらしていると捉え、「炎症」、「PVAT」、「褐色化」を有機的に結び付けることで動脈硬化形成機序の新しい概念を生み出そうとする点にある。動脈硬化形成メカニズムを炎症の遷延と収束の観点から理解し、動脈硬化の新たな予防・治療のターゲットの創出を目指し、本研究を開始した。 本研究では、adipoq-Cre PRDM16 floxマウス(脂肪褐色化制御分子PRDM16の脂肪特異的KOマウス)を用いて検討を行った。このマウスを用いてワイヤー擦過による大腿動脈の内皮傷害を作成した後、免疫組織染色による免疫細胞浸潤 (マクロファージ(M1/M2)、好中球、リンパ球、マスト細胞など)、qRT-PCRによる炎症性サイトカイン発現、EVG染色 (内膜/中膜壁厚比) による血管リモデリングの変化を検討した。その結果、傷害14日後の血管内膜肥厚が野生型マウスに比べて増悪した。F4/80による免疫染色では、PVATおよび血管におけるマクロファージの集積の程度には両群で差がなかった一方で、褐色化ブロックマウスにおいては、炎症型マクロファージマーカーであるiNOS陽性細胞数は顕著に増加しており、一方で抗炎症型マクロファージであるCD206陽性細胞数は減少していたことから、褐色化をブロックすることでマクロファージの性質が変化することが示唆された。これらの結果から、血管傷害後に生じるPVATの褐色化が、血管の炎症を収束に導き、病的な血管リモデリングを抑制することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予想していたよりも多くの新しい知見が得られたため、より大きな成果を出すために十分な検証が必要と考え、実験計画を延長したため。
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今後の研究の推進方策 |
血管周囲脂肪の褐色化がもたらす抗炎症メカニズムの分子機序を解明するため、分子生物学的、およびオミックス的解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験結果に一部予想外な部分があり、その検証を行うために当初の計画よりも進捗スピードにやや遅れが生じていた。検証はすでにほぼ終わっており、次年度は計画通りマウスや細胞を用いた研究を行う予定であり、繰越分はそこに充当する。
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