本研究では、肺高血圧症における細胞老化や代謝リモデリングの病的意義を明らかにすることを目的としている。野生型肺高血圧マウスモデルを用いた検討を行い、肺血管内皮細胞や平滑筋細胞の細胞老化や代謝リモデリングをFlow cytometry (FACS) やメタボローム解析を用いて解析する。また、内皮及び平滑筋細胞特異的細胞老化制御マウスの作製を行う(Floxedマウスは作製済みであり、現在交配中である)。肺高血圧モデルマウスやヒト肺高血圧症例の様々な採血部位に由来する血漿を用いてメタボローム解析を行い、肺高血圧に伴い変動する代謝産物を同定する予定であった。 低酸素による肺高血圧症(PH)モデルマウスを開発し、肺におけるp53の発現が有意に低下していることを明らかにした。メタボローム解析と細胞外フラックスアナライザーSeahorse XFを用いたin vitro実験から、PASMCsにおけるp53の発現抑制は、解糖のアップレギュレーションとミトコンドリア呼吸の減少をもたらし、がん細胞に似た増殖性の表現型であることが示唆されました。マウスPHモデルでp53を全身的に遺伝的に枯渇させると、肺の症状がより重篤化することが示された。 肺高血圧マウスを用いた実験では一定の成果を報告したが、研究チームの退職・異動に伴い、十分な研究活動が困難となり、ヒト検体を用いた研究は進行しなかった。
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