研究課題/領域番号 |
18K08100
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
林 研至 金沢大学, 附属病院, 助教 (00422642)
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研究分担者 |
野村 章洋 金沢大学, 附属病院, 特任助教 (30707542)
藤野 陽 金沢大学, 保健学系, 准教授 (40361993)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 遺伝性不整脈 / 網羅的遺伝子解析 / 機能解析 / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
遺伝性不整脈102症例に対して次世代シークエンサーによる全エクソーム解析あるいは拡大候補遺伝子解析を行なった。High-Resolution Melting法でLQT1, LQT2, LQT3に異常を認めなかった先天性QT延長症候群65症例に対し、既報の15遺伝子の変異の有無を解析したところ、7症例にKCNQ1変異、6症例にKCNH2変異、1症例にCALM2変異を見出した。また、LQT1およびLQT2についてMLPAを行ったところ、1例に欠失変異を見出した。さらに、1症例にRYR2変異を、2症例にPKP2変異を見出した。Type 1 Brugada症候群25症例に対し、既報の23遺伝子の変異の有無を解析したところ、2症例にSCN5A変異、1症例にGPD1-L変異、1症例にSCN1B変異、1症例にTRPM4変異を見出した。ARVC 12症例に対し、既報の17遺伝子の変異の有無を解析したところ、4症例にDSG2変異、1症例にPKP2変異、1症例にRYR2変異、1症例にLMNA変異、1症例にTTN変異を見出した。 見いだされた希少遺伝子変異の病的意義を明らかにするため、モルフォリノ、Crispr/Cas9システムあるいはENUミュータジェネシスを用いて遺伝子改変ゼブラフィッシュを作成し、機能評価を試みた。若年発症徐脈症例より見出されたLMNA遺伝子変異、LQTSより見いだされたKCNQ1遺伝子変異、KCNH2遺伝子変異について、それぞれの遺伝子のホモログであるゼブラフィッシュlmna遺伝子, kcnh2a遺伝子, kcnq1遺伝子の改変を行った。そのゼブラフィッシュ胚に対し、心拍数計測、心機能評価、光学マッピングによる刺激伝導速度測定、活動電位測定、心電図測定の評価などを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目標のうち、(1) 遺伝性不整脈家系に対し次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子解析およびゲノムインフォマティクスを行い、希少遺伝子変異を検索することについては、新たに集積した102症例に対して解析することができた。一定の研究成果が得られ、おおむね順調に経過していると考えられる。(2) 見いだされた希少遺伝子変異に対し、家族解析および動物培養細胞や遺伝子改変ゼブラフィッシュを用いた機能解析を行い、原因遺伝子変異を決定することについては、これまでに遺伝性不整脈の原因遺伝子として報告された3遺伝子のホモログをノックアウトしたゼブラフィッシュを用いて機能評価を行うことができた。一定の研究成果が得られ、おおむね順調に経過していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き遺伝性不整脈家系を集積し、次世代シークエンサーを用いて遺伝子解析を行い、希少遺伝子変異を検索する。米国臨床遺伝・ゲノム学会より報告されたガイドラインに基づいて遺伝子変異の病原性を決定する。特に家族解析と機能解析を重点的に行う。見出された遺伝子変異のうち、イオンチャネル遺伝子について動物培養細胞を用いて機能評価を行う。全エクソーム解析で見いだされた新規疾患原因遺伝子変異について、モルフォリノあるいはCrispr/Cas9システムを用いてゼブラフィッシュの遺伝子改変を行い、その病的意義を評価する。さらに、動物培養細胞や遺伝子改変ゼブラフィッシュを用いて遺伝子変異による不整脈発症機序を明らかにしたうえで、発症機序に基づいた有効治療薬を探索し、決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要とする消耗品を購入するには足りない使用額であったため。 次年度の研究費とあわせて消耗品を購入する予定である。
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