研究課題
遺伝性不整脈である早期発症心臓刺激伝導障害の網羅的遺伝子解析を行い、病的遺伝子変異を見出すことを目的として研究を行った。早期発症心臓刺激伝導障害23症例に対し全エクソーム解析を行い、そのうち不整脈・心筋症に関連する117遺伝子を対象とし、米国臨床遺伝・ゲノム学会より報告されたガイドラインに基づいて見いだされた稀なバリアントの病原性を評価した。イオンチャネル遺伝子バリアントについてはパッチクランプ法を、非イオンチャネル遺伝子バリアントについてはゼブラフィッシュを用いた機能解析を行った。網羅的遺伝子解析の結果、26個の不整脈・心筋症関連遺伝子の極めて稀なバリアントを見出した。このうち、6個のイオンチャネル遺伝子バリアント(KCNH2バリアント1個, SCN5Aバリアント1個, SCN10Aバリアント4個)において発現電流の異常を認め、5つの非イオンチャネル遺伝子バリアント(LMNAバリアント3個, EMDバリアント2個)において、変異を導入したゼブラフィッシュ胚の心拍数低下、心筋伝導速度の低下を認めた。早期発症心臓刺激伝導障害23症例中11人(48%)において病的遺伝子変異を見出した。機能異常を認めた11バリアントのうち7バリアントはもともと重要性不明と判定されており、機能解析結果を考慮した結果、最終的にlikely pathogenicと判定された。機能解析は重要性不明に分類されたバリアントの病的意義を明らかにするため有用と考えられた。
2: おおむね順調に進展している
研究目標のうち、(1) 遺伝性不整脈家系に対し次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子解析およびゲノムインフォマティクスを行い、希少遺伝子変異を検索することについては、早期発症心臓刺激伝導障害23症例に対して解析することができた。 (2) 見いだされた希少遺伝子変異に対し、家族解析および動物培養細胞や遺伝子改変ゼブラフィッシュを用いた機能解析を行った。米国臨床遺伝・ゲノム学会より報告されたガイドラインに基づいてバリアントの病原性を決定し、早期発症心臓刺激伝導障害症例の48%に病的遺伝子変異を有することを明らかにした。これらの研究成果をAHA Scientific sessions (2019年、シカゴ)、日本人類遺伝学会学術集会(2019年、長崎)で発表し、Cardiovasc Res誌に報告することができ、おおむね順調に経過していると考えられる。
引き続き遺伝性不整脈家系を集積し、次世代シークエンサーを用いて遺伝子解析を行い、希少遺伝子変異を検索する。また、米国臨床遺伝・ゲノム学会より報告されたガイドラインに基づいて遺伝子変異の病原性を決定する。見出された遺伝子変異のうち、イオンチャネル遺伝子について動物培養細胞を用いて機能評価を行う。全エクソーム解析で見いだされた新規疾患原因遺伝子変異について、モルフォリノあるいはCrispr/Cas9システムを用いてゼブラフィッシュの遺伝子改変を行い、その病的意義を評価する。さらに、動物培養細胞や遺伝子改変ゼブラフィッシュを用いて遺伝子変異による不整脈発症機序を明らかにしたうえで、発症機序に基づいた有効治療薬を探索し、決定する。機能解析のツールとしてiPS細胞を導入し、より正確かつ信頼性のある疾患モデルの構築を目指す。
必要とする消耗品を購入するには足りない使用額であったため。次年度の研究費とあわせて消耗品を購入する予定である。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 1件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Cardiovasc Res.
巻: 0 ページ: 0
10.1093/cvr/cvaa010.
JAMA Network Open.
巻: 3 ページ: e202881
10.1001/jamanetworkopen.2020.2881.
Diseases.
巻: 8 ページ: 0
10.3390/diseases8010004.
Front Physiol.
巻: 10 ページ: 1545
10.3389/fphys.2019.01545.
J Cardiovasc Electrophysiol.
巻: 31 ページ: 163-173
10.1111/jce.14313.
Circulation.
巻: 139 ページ: 2157-2169
10.1161/CIRCULATIONAHA.118.036761.
ESC Heart Fail.
巻: 6 ページ: 406-415
10.1002/ehf2.12410.
Heart Rhythm.
巻: 16 ページ: 829-837
10.1016/j.hrthm.2018.11.029.
巻: 16 ページ: e56-e57
10.1016/j.hrthm.2019.04.001.
Heart Vessels.
巻: 34 ページ: 1024-1030
10.1007/s00380-018-01333-6.
日本医事新報
巻: 4992 ページ: 20-9