研究実績の概要 |
Dahl食塩感受性高血圧ラットを、6週齢から低食塩摂取継続群(n=10)、8%の高食塩摂取群(n=10)、高食塩摂取+ SGLT2阻害薬 (ipragliflozin 0.04%混餌投与)群(n=10)、高食塩摂取+ARB(losartan 0.05%混餌投与)群(n=10)、高食塩摂取+SGLT2阻害薬+ARB(n=10)群に割り付け、薬剤は6週齢から8週間投与し、第14週齢に血液検査、神経体液性因子、心血行動態・心筋組織、腎組織の検討を行った。 血圧は、高食塩群、高食塩+SGLT2阻害薬投与群、高食塩+ARB投与群で有意に上昇したが、高食塩+SGLT2阻害薬+ARB投与群では血圧上昇は抑制された。尿中ナトリウム排泄量は、高食塩+SGLT2阻害薬+ARB投与群で、高食塩群、高食塩+SGLT2阻害薬群、高食塩+ARB群にくらべ有意に増加し、SGLT2阻害薬+ARB併用の食感受性改善効果が示された。 組織学的評価において、高塩食群、高塩食+SGLT2阻害薬、高塩食+ARB投与群で腎糸球体硬化スコアの有意な改善を示した。心重量については、高食塩投与によって低塩食群(0.23±0.02g/cm)と比較して増加が認められたが、高塩食+SGLT2阻害薬+ARB投与群では、それぞれの群と比較して心重量が改善していた(0.24±0.01 vs 0.29±0.02; 0.28±0.02; 0.29±0.02g/cm, p<0.05)。さらに、心筋サイズの抑制、心筋間質ならびに血管周囲の線維化いずれにおいても高塩食+SGLT2阻害薬+ARB投与群で、無治療群または単独薬剤投与群に較べて改善所見を得た。 腎のAT1R, NHE3およびNKCC2の蛋白発現がSGLT2阻害薬単独投与では低下しない一方で、併用療法では両者とも有意に抑制されており、AT1R発現抑制作用に関してはARB単独投与よりもさらに優れていた。AT1R-NHE3経路の制御機構が、SGLT2阻害薬とARB併用による食塩感受性改善の中心機序であることが示唆された。
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