遺伝性疾患はゲノムDNA上のタンパク翻訳領域の変異で発症することが多い。しかし、同じ変異を保持しながら、家系内で症状が違うことがある。また明らかに遺伝性疾患の表現型を取るにもかかわらず、タンパク翻訳領域には変異が同定されないことがある。我々は遺伝性不整脈を中心に遺伝性循環器疾患の遺伝子スクリーニング及びその機能解析を行ってきており、これらのスクリーニングで得られた家系内の表現型の差を調べ、また表現型を呈しながら原因遺伝子変異が同定 されない症例について、エピゲノム関連のスクリーニングを行い、疾患との関連を解明するため、研究を行った。 当初の計画では、Chip-Seqを行う予定であったが、全エクソン解析および全ゲノム解析を先に実施し、疾患に影響しているゲノムDNA上の変異を同定すべきと考えた。さらに2019年度にはロングシークエンサーであるOxford NanoporeのGridIONを購入することになり、ゲノムDNAの構造異常が容易に同定できることになった。 そこでまず、Nanopore sequencerの解析条件を設定する必要があった。そのため、すでに構造異常が同定されているサンプルについて泳動を行った。最初の泳動では、ライブラリ調整後のサンプルで断片化したものも同時に泳動してしまったため、十分量のデータを得ることができなかった。これらの点を改善し、short readでは同定が困難であった相同配列部分のBreakpointも同定することが可能であった。 さらにNanopore SequencerではCRISPR9/Cas9システムを用いた対象領域のCaptureによる解析法が開発された。そのため、我々がターゲットとする遺伝子領域のスクリーニングを先行させるため、CRISPR/Cas9用の解析デザインを行い、エピゲノム関連の構造多型の検出を目指した。
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