心臓と各臓器の連関は何か?という疑問に答えるため、本研究を行い、解析の48時間前(2日fasting群:2 Day)、24時間前(1日fasting群:1 Day)に、マウスのケージから食餌を取り除き水は与え続けた。食餌を取り除かなかった群(Fed)を対照として、トランスクリプトーム(心臓、肝臓、骨格筋)、メタボローム(心臓、肝臓、骨格筋)のデータを採取した。このデータベースを、多階層にわたるtrans-omics解析を行い変化しているpathwayの解析を行った。公開されているマウス大動脈縮窄心不全モデルの遺伝子データベース、左室補助循環装置装着の重症心不全患者の遺伝子データベース(いずれも公開されている)や水泳による生理的心肥大マウスモデルのデータと対比させ、共通点・相違点・臓器間結ぶ因子を、分子レベル・パスウェイレベルで同定した。2022年度では、ヘムとヘムオキシゲナーゼに関わる蛋白の増加が認められており、その発現抑制・発現もたらす、薬剤投与実験を行った。この結果、ヘム生合成の律速酵素であるALAS-1が低下しており、遊離ヘム増加を認めた。遊離ヘムは、活性酸素の生成を通して酸化ストレスの増大に寄与しており、ヘムオキシゲナーゼ誘導体により、心機能低下は改善した。この結果は、栄養状態悪化による心不全増悪のメカニズムと、その改善および薬剤介入の可能性を示唆した。現在、この結果を論文化している。 本研究課題を通して、複数臓器の遺伝子の動態および代謝産物の動態の同時解析、絶食心機能低下モデルの確立、およびそのメカニズムと薬剤介入の可能性を明らかにした。
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