研究実績の概要 |
2019年度 1.作成したCaM高親和性RyR2変異マウスを我々が保有している3つのCPVT型KIマウスR2474S KIマウスの掛け合わせを行い、genotyping後、ヘテロマウスが抗不整脈性を獲得しているか否かを検討した。その結果このマウスはテレメトリーによる24時間ECGモニタリング、及びepinephrineの投与でWTマウスに比べ強い不整脈耐性を示した。 2.CaM HAマウス KIマウスに対してTAC作成4、8週間後に心エコーにて左室径・壁厚、fractional shorteningを計測した後、エピネフリン/運動負荷による不整脈誘発試験を行った。さらに、心筋細胞を単離培養し以下を計測した;①Ca2+ transient、SR Ca2+ content、Ca2+ spark、cell shortening;②anti-CaM, anti-GRK5, anti-HDAC4,5, anti-p-HDAC4,5の抗体を用いた免疫染色によるCaM, HDAC, GRK5の核・細胞質内分布、リン酸化HDACの割合および心肥大遺伝子(BNP, c-fos, c-jun)の発現;③蛍光ラベルしたrecombinant CaM(F-CaM)の細胞内導入によるRyR2に対するCaM結合能。実験ではCaM HAマウスはTACにおいて非常に強い生存率の改善を見た。またこのマウスにおいてはCaMの核内移行がほぼ完全に抑えられており、HDACの核外移動もほぼ完全に抑えていた。
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今後の研究の推進方策 |
CaM HAマウスにおけるTAC後のCaM, HDAC, 肥大遺伝子の解析: 我々はRyR2CaM結合ドメイン(RyR2CaMBD)のmutated peptideを多数スクリーニングした結果、RyR2に対するCaMの結合を強める変異を見いだし、その変異RyR2を組み込んだノックイン(KI)マウス(CaM HAマウス)を作成した。このマウスの特徴はCaMには変異を加えてないのでCaMの他の蛋白質への結合には影響が無いことである。CaM HAマウスでは、DPc10(CPVTにおけるRyR2内の変異部位:R2474Sを含んだペプチドで、native domainと分子間競合してドメインunzipを引き起こす)によりCaMが解離しない、すなわちドメイン連関障害→CaM解離が起きないことを確認している。このCaM HAマウスに対してTACを行い8週間後に心筋細胞を単離し、①形態、予後、肥大遺伝子の発現を解析し、②固定してanti-CaM, anti-GRK5, anti-HDAC4,5, anti-p-HDAC4,5の抗体にて免疫染色を行う、ShamマウスではH2O2(ドメイン連関障害→CaM解離を誘導;JMCC 2015)による刺激後、経時的に固定し同様の免疫染色を行う。③蛍光ラベルしたrecombinant CaM(F-CaM)を導入し、RyR2に対するCaMの親和性を計測する。④Ca2+ spark, SR Ca2+ content, field stimulation時のspontaneous Ca2+ transientを計測する。これらの解析によりドメイン連関障害→CaM解離を抑制するという介入が心肥大を抑止することができるかを検討する。
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