研究実績の概要 |
2018年度に研究対象となる症例は1例であり、23歳の女性で、cAVSD,hypo RV,PA,TAPVCに対して7歳時にTCPC(EC)を行った患者さんであった。クロミフェン投与を行い、排卵誘発後に妊娠成立となった。本症例において、妊娠前評価のための心臓カテーテル検査は行えなかった。(実施予定としてたが実施前に妊娠成立となった)妊娠初期からヘパリンの投与を開始し、妊娠期間中入院管理とした。APTT 60-80程度となるようにヘパリンを投与した。FDP,D-dimerの上昇は妊娠期間を通して軽度にとどまっていたが、妊娠12週ごろの母体の心エコーで導管内に血栓様の構造物が確認された。以降、その構造物の大きさに変化はなく、他に血栓のイベントはなかった。また、分娩中、分娩後も出血のイベントもなかった。EF 60%程度、房室弁逆流は1度で妊娠期間を通して変化はなく、BNPは最大で24.5pg/mlであり母体の血行動態として大きな変化はみられず、明らかな心不全症状もみられなかった。胎児については、妊娠26週と30週の際に詳細に評価でき、解剖学的な異常はなく、心機能も良好で、LV tei index 0.77(26週), 0.47(30週)であった。経過は順調であったが、妊娠34週4日自然陣痛発来し、そのまま分娩に至った。児は2060gであった。本症例は妊娠直前の心臓カテーテル検査は行えなかったが、Fontan循環としては良好であったと推察され、そのことが大きな問題とならなかった妊娠経過にも影響したであろうと考えられる。なぜ早産に至ったかはまだ明らかでないが、今後検討が必要と考えられる。また、胎児循環としては充分に保たれており、早産ではあったが、体重は週数相当であり発育は問題なかったと考えられる。
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