研究課題/領域番号 |
18K08110
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
辻田 賢一 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (60571263)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 心不全 / 冠微小循環障害 / 心筋症 / 心筋虚血 / 冠内圧 / 冠血流 / 心筋エネルギー代謝 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、①非虚血性心不全症例の冠血行動態をCombowireにて評価し、冠微小循環障害(MVD)の存在を診断・分類する事、②基礎心疾患とMVD存在・病態の関連を明らかにする事、③各種薬剤や心内植込みデバイスのMVD改善効果判定を行う事である。 平成30年度は、研究計画に則り、おおむね予定通りの非虚血性心不全症例の登録が進行した。この登録患者のデータ解析によって、MVD存在の生理学的評価のゴールドスタンダードである冠血流予備量比:FFRの正確な評価に対象症例の冠動脈走行による精細な高低差計測が必要なことを初めて発見し報告した(J Cardiol 2020)。また、MVD潜在の代表的心疾患である心アミロイドーシスの診断能力向上に関する臨床指標を明らかにした(Circ J 2020など)。さらに、MVDが病態を修飾する収縮保持性心不全の診断並びに予後予測にH2FPEF Scoreが有用であることも報告した(Am J Hypertens 2019, ESC HF 2019)。 平成31年度は、上記対象患者に対し、標準的心不全薬物治療群の対照群治療ならびに新規心不全治療群の登録並びにフォローアップを施行した。おおむね順調な患者登録、データ収集が得られた。 令和2年度は、MVDに関する全国レジストリを報告した(Int J Cardiol Heart Vasc. 2020、Eur Heart J 2021 in press)。 令和3年度は、国際的なMVD研究組織であるCoronary Vasomotor Disorders International Study (COVADIS) Groupから、その臨床背景や予後を報告した(Eur Heart J 2021)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記”研究実績の概要”の通り、患者登録を得、また計画通りの血行動態評価、並びに患者治療群の割り付け、フォローアップが行われた。また、心内膜心筋生検も数多くの症例で施行され、更なる解析の準備が概ね予定通り進行している。更に、登録中のデータから、①MVD存在の生理学的評価のゴールドスタンダードである冠血流予備量比:FFRの正確な評価に対象症例の冠動脈走行による精細な高低差計測が必要なこと(J Cardiol 2020)。②MVD潜在の代表的心疾患である心アミロイドーシスの診断能力向上に関する臨床指標を明らかにしたこと(Circ J 2020など)、③MVDが病態を修飾する収縮保持性心不全の診断並びに予後予測にH2FPEF Scoreが有用であること(Am J Hypertens 2019, ESC HF 2019)、④心筋エネルギー代謝において、ケトン体の重要な役割を果たし、その機序にはエピジェネティックなメカニズムが関与していること(J Am Coll Cardiol 2019, Nat Metab 2021)。⑤本研究課題の症例を含めて、全国的なMVDレジストリも展開され、その患者背景など特徴も明らかになったこと(Int J Cardiol Heart Vasc. 2020、Eur Heart J 2021)など、新たな知見も得られ、英文原著として報告できている。しかしながら、コロナ禍の影響で、本研究の目的の一つ、治療法の開発が遅れており、(3)やや遅れていると判断せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍で登録、解析が遅れていたが、一方でMVD改善効果の期待される薬剤開発が進んだ。これまでの研究進捗状況に引き続き、研究計画書に則り、MVD改善効果の解析を進める。 (1)非虚血性心不全に対する通常治療および新規治療戦略の実施と対象症例の予後追跡、イベントのフォロー。 (2)フォローアップ症例におけるMVD改善・増悪の予後規定因子の探索:フォローアップ時のMVD再評価データと初回検査時のMVDデータを比較し、各々の臨床背景因子や処方薬、治療方法などを従属因子とし単変量・多変量解析を行うことで、非虚血性心不全患者におけるMVD改善・増悪の予後規定因子の探索を行う。 の2点に関して、引き続き解析、論文化を進めていく。さらに、今後心不全対策に関する研究費申請を文部科研、厚労科研に申請中であり、これらの研究開発課題にもMVDメカニズム解明の取り組みを組み込み、解決への挑戦を継続・発展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による参加予定学会の中止、解析が延期したものを次年度使用する計画とした。
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