研究課題/領域番号 |
18K08111
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
中西 直彦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10637911)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / カベオラ / カベオリン / キャビン / BMPR2 |
研究実績の概要 |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者において細胞膜カベオラ構成蛋白であるCaveolin-1 (Cav1) の遺伝子変異が報告され、遺伝性PAHの原因遺伝子の一つとして位置付けられた。以前我々は、Caveolinとともにカベオラを構成しているCavinファミリーの一つであるCavin-4が肺動脈血管平滑筋細胞において、Cav1を介して肺高血圧症の発症・進展に重要な役割を果たしていることを報告した。Cav1は遺伝性PAHの原因として最も頻度の高いBMPR2と直接結合し、Smadへの下流シグナルに重要な役割を果たしていることが報告されている。そこで本研究では、Cavin-CaveolinシステムのTGF-β/BMPスーパーファミリーに対する役割およびPAH 発症・進展の関係に関して検討を行った。 Cav1ノックアウトマウスの肺動脈血管内皮細胞ではカベオラの消失を認めた。Cav1ノックアウトマウスでは肺高血圧症が起こるが、浸透圧ポンプで少量FK506を持続投与しBMP/Smadシグナルを活性化すると肺高血圧症・右室肥大・肺動脈リモデリングが抑制された。ヒト肺動脈血管内皮細胞でCav1をsiRNAを用いてノックダウンするとSmad1/5/9のリン酸化が抑制されたが、少量FK506投与にてその抑制効果が打ち消されていた。免疫沈降にてCav1はBMPR2と結合していたが、この結合はCavin-1の過剰発現にて抑制されていた。免疫染色で確認すると、ヒト肺動脈血管内皮細胞ではCavin-1を過剰発現させるとBMPR2は細胞膜から離れて核内へと移行していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Caveolin-1による肺高血圧症にBMPR2が関与していること、ならびにCaveolin-1とBMPR2の相互結合におけるCavinの関与を検討することが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
CavinファミリーがCaveolin-1とBMPR2の相互結合に与える影響に関して、その下流シグナルの評価を行っていく。また、その結合様式やメカニズムの解明を行い、CaveolinとCavinとの結合を阻害する既存薬剤を探索し、実験的肺高血圧モデル動物へ投与し肺高血圧症が抑制されるかを検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に実施の実験においては抗体の購入費用や細胞培養培地の購入費用を予定よりも安価に抑えることが出来たため、次年度使用が生じた。これに関しては、本年度実施中の実験の追加実験ならびにその評価のための質量分析の費用へあてる予定である。
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