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2018 年度 実施状況報告書

動脈硬化の進展抑制を指向した活性酸素の産生/消去スイッチング機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K08115
研究機関昭和大学

研究代表者

芦野 隆  昭和大学, 薬学部, 講師 (00338534)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード動脈硬化 / 血管内膜肥厚 / 酸化ストレス / IQGAP1 / 血管平滑筋細胞
研究実績の概要

活性酸素は、シグナル伝達因子として細胞機能の制御している一方で、過剰かつ持続的な暴露は、酸化ストレスによる組織障害を引き起こし、疾病形成に関与する。本研究は、血管の恒常性を維持しすると同時に、心血管疾患の引き金となる動脈硬化を抑制するには、活性酸素の産生/消去の適切な切り替えが重要であると考え、そのスイッチング機能の解明と動脈硬化進展抑制への応用を目的としている。2018年度は、活性酸素産生に重要な役割を担う足場タンパク質IQGAP1の血管組織の機能について検討を行い以下の点を明らかにした。
1.血管平滑筋細胞遊走におけるIQGAP1の役割: 血管平滑筋細胞への血小板由来増殖因子(PDGF)刺激によりIQGAP1は、リーディングエッジ部位に移行し、アクチン繊維形態の制御に関与するRhoファミリー低分子量Gタンパク質Rac1と共局在することが明らかになった。そこで、siRNAを用いたIQGAP1ノックダウンによる効果を検討したところ、PDGFによるVSMC遊走が抑制された。これらin vitroによる検討により、IQGAP1はRac1と共役することで遊走を制御していることが示唆された。
2.血管傷害後の内膜肥厚におけるIQGAP1の役割: マウス大腿動脈ワイヤー傷害モデルを用いたin vivo解析により、傷害血管の新生内膜肥厚部位の管腔側でIQGAP1の強発現が見られた。この結果は、以前報告したIQGAP1遺伝子欠損マウスでは内膜肥厚が抑制されるという結果を支持しているもので、IQGAP1が動脈硬化進展に寄与していることが示唆された。
以上の結果から、活性酸素の産生への関与が示唆されるIQGAP1の発現が血管平滑筋細胞の遊走能を強め血管内膜肥厚を引き起こしている可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、活性酸素産生に寄与するIQGAP1が血管平滑筋細胞遊走と新生内膜肥厚進展に関与することを見出した。この結果は以前報告した、酸化ストレス応答因子Nrf2が内膜肥厚を抑制するという結果と対照的であり、IQGAP1による活性酸素産生亢進が血管組織の恒常性維持に対して悪影響を及ぼしている可能性を示唆している。しかし、傷害血管の創傷治癒には活性酸素が重要な役割を果たしていることが報告されていることからも、活性酸素の産生/消去のバランスが重要であると考えられる。活性酸素産生と消去に関与するIQGAPとNrf2の相互連携による血管リモデリング制御の詳細なメカニズムの解明が今後の課題となってくるが、現在のところ順調に研究は進んでいるものと考える。

今後の研究の推進方策

2018年度の検討において、IQGAP1が血管傷害後の内膜肥厚増悪と血管平滑筋細胞遊走に関与することが明らかとなった。2019年度は、血管平滑筋細胞遊走におけるIQGAP1とNrf2の相互制御を明らかにする目的で、それぞれのノックダウン細胞を用いて細胞遊走に重要な接着班やラメリポディア形成における作用や活性酸素産生能の変化を検討する。また、傷害血管の修復段階におけるNrf2とIQGAP1の細胞内局在変化を検討していく予定である。

次年度使用額が生じた理由

研究課題申請時の計画に従い、消耗品の購入に助成金をあてていたが、購入物品の金額差により、次年度繰越金がでてしまう結果となった。
繰り越された研究費は、次年度に国際学会での研究成果発表を予定しているため、参加費や旅費等の支払いに繰り入れる予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Inorganic polyphosphate protects against lipopolysaccharide-induced lethality and tissue injury through regulation of macrophage recruitment2019

    • 著者名/発表者名
      Terashima-Hasegawa Mikako、Ashino Takashi、Kawazoe Yumi、Shiba Toshikazu、Manabe Atsufumi、Numazawa Satoshi
    • 雑誌名

      Biochemical Pharmacology

      巻: 159 ページ: 96~105

    • DOI

      10.1016/j.bcp.2018.11.017

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Copper transporter ATP7A interacts with IQGAP1, a Rac1 binding scaffolding protein: role in PDGF-induced VSMC migration and vascular remodeling2018

    • 著者名/発表者名
      Ashino Takashi、Kohno Takashi、Sudhahar Varadarajan、Ash Dipankar、Ushio-Fukai Masuko、Fukai Tohru
    • 雑誌名

      American Journal of Physiology-Cell Physiology

      巻: 315 ページ: C850~C862

    • DOI

      10.1152/ajpcell.00230.2018

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 腹膜炎モデルにおける長鎖分割ポリリン酸の致死率改善効果2019

    • 著者名/発表者名
      山崎 喜貴、芦野 隆、川添 祐美、柴 肇一、沼澤 聡
    • 学会等名
      日本薬学会第139年会
  • [学会発表] 銅トランスポーターATP7Aによるスキャホールドタンパク質IQGAP1結合を介した血管平滑筋細胞遊走制御と新生内膜肥厚への役割2018

    • 著者名/発表者名
      芦野 隆、河野 隆志、Sudhahar V、Ash D、深井 真寿子、深井 透
    • 学会等名
      第45回日本毒性学会学術年会
  • [学会発表] 無機ポリリン酸によるマクロファージ遊走抑制を介したリポポリサッカライド誘発致死性ショック保護作用2018

    • 著者名/発表者名
      芦野 隆、寺島 実華子、川添 祐美、柴 肇一、真鍋 厚史、沼澤 聡
    • 学会等名
      フォーラム2018:衛生薬学・環境トキシコロジー
  • [学会発表] 長鎖ポリリン酸のマクロファージ活性化抑制作用とエンドトキシンショックモデルの致死率改善効果2018

    • 著者名/発表者名
      寺島 実華子、芦野 隆、川添 祐美、柴 肇一、沼澤 聡、真鍋 厚史
    • 学会等名
      第149回日本歯科保存学会2018年度秋季学術大会
  • [備考] 昭和大学薬学部基礎医療薬学講座毒物学部門ホームページ

    • URL

      http://www10.showa-u.ac.jp/~toxicol/index.htm

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公開日: 2019-12-27  

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