研究課題
本研究は、我々が開発したメタボリック症候群イヌ高頻度心房刺激モデルを用いて、メタボリック症候群によって促進された心房筋の構造的リモデリングの機序を明らかにするともに、その表現型である心房周囲脂肪の心房細動進展における機序を解明することである。動物実験:ビーグル犬15頭を対象に高カロリー食を給与し、10~12週間の長時間高頻度心房刺激を行う肥満合併長時間高頻度心房刺激群 (MetS-L-AF群:5頭)、通常食に長時間高頻度刺激を行う群 (L-AF群:5頭)、高脂肪食のみを与える肥満群(MetS群:5頭)に分ける。電気生理学的検査を行い、心内電位や心房細動の誘発性を評価し、組織学的、分子生物学的解析を行う。令和元年は、MetSモデル5頭が終了し、電気生理学的検査、組織学的検討、分子生物学的解析が終了した。現在、MetS-L-AF群1頭、L-AF群3頭は電気生理学的検査は終了し、組織学的検証を準備している。さらにMetS-L-AF群1頭はペースメーカー移植は終了し、電気生理学的検査を行う予定である。本研究は、先行研究の通常食を与えた対照群、高カロリー食を給与し、4~8週間の短期間高頻度刺激を行ったMetS-S-AF群(5頭)、通常食に短期間高頻度刺激を行ったS-AF群(5頭)も含めて、総合的に比較検討する。先行研究の結果(現在、論文作成中):S-AF群が不応期が短く、組織学的線維化の分布、線維化関連遺伝子の発現が見られ、MetS-S-AF群ではさらにその傾向が強かった。MetS群は左房圧が上昇しており、脂肪浸潤はMetS群、MetS-S-AF群に見られ、高頻度連続指摘による心房細動持続期間は、対照群、S-AF群、MetS群、MetS-S-AF群と段階的に延長した。以上から、肥満に伴う左房圧上昇や脂肪浸潤が心房細動の基質を促進する機序の一因に関連していることが示唆された。
3: やや遅れている
当初の予定では令和2年の半ばにすべての電気生理学的検査を終了する予定であったが、現時点で残りのMetS-L-AF群3頭、L-AF群2頭のペースメーカー移植後に電気生理学的検査を行う必要がある。実験は計画通りに行われていたが、MetS-L-AF群1頭、L-AF群2頭が、ペースメーカ移植後のリードの心室穿孔を中心とした合併症により死亡した。さらに現在、電気生理学的検査を行ったL-AF群3頭中1頭は、ペースメーカー移植後かなり衰弱したため、データの普遍性に問題がないかの組織学的検証を行う必要がある。このため、L-AF群は追加で1頭行う必要がある可能性があるかもしれない。また、コロナ感染の影響で、緊急事態宣言が出たこともあり、研究員の業務が滞りが出ており、遅延する可能性がある。以上の複数の要因から遅延している。
令和2年度に残りのMetS-L-AF群3頭、L-AF群2頭(必要であれば3頭)のペースメーカ移植後電気生理学的検査を行い、その後、組織学的検証および分子生物学的検証を行う必要がある。このため、現在、高カロリーおよび通常食にて飼育する各群の犬の飼育を増やし、犬の納入する時期も短縮し、令和2年12月までにペースメーカー、電気生理学的検査までの工程は終了する予定を立てた。また、組織学的検証および分子生物学的検証に関しては、研究員の協力のもと早期に行う体制を整えている。論文化に関しては、現在、方法論までの英文化は終了しており、結果が出た次第、早急に終了するように準備している、以上の方策で、令和2年度終了までにすべての工程が終了するように、研究を再計画した。
当初の予定より、ペースメーカ植込みで死亡する場合が多かったため、実験計画全体に遅れが出ている。このため、当初予定していた組織学的検証、分子生物学的検証で使用する抗体などの使用額に残額が生じた。次年度の犬の購入あるいは組織学的検証、分子生物学的検証で使用する消耗品の一部に使用する予定である。
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