研究実績の概要 |
前年度はC-peptideがAutophagy の亢進を引き起こしNrf2を活性することにより種々のストレスに対する適応を起こすことを細胞培養実験で確かめた。この結果をまとめた抄録はアメリカ糖尿病学会の年次科学ミーティングに採択された。 今年度はその結果を受けCーpeptideが同様のNrf2の活性化を生じるか、また投与することによりアドリアマイシンの心毒性を軽減することができるかについて検討を行った。以前行った検討ではC-peptide は400 microg/kg body weightを1日2回、2日間連続で投与することにより、高血糖による血管機能異常が抑制されることが示されたので、同様の投与方法で、ラット、マウスでErf2の下流遺伝子(Pgd, Idh1, SLC7A11, NQO1, GSTA3, Hmox1, Aldh3a1, Srxn1) の発現を測定した。大動脈、網膜、坐骨神経、心臓などを麻酔下で採取、RT-real time PCRを行った。C-peptideはこれらの組織で3-4つの下流遺伝子の発現を有意に増加させることがわかった。特にPdg, IDH1, NQO1,SXN1 の発現の増加が顕著であった。 アドリアマイシンは心筋のapoptosisを引き起こし、心不全の副作用を起こすことが知られているが、実験的にはマウスにアドリアマイシンを少量投与するモデルが使われる。このモデルにおいてCーpeptideを事前投与をすることにより心毒性の軽減が得られるかを評価した。マウスに2mg/kg を腹腔内一回投与、一週間後に心臓を採取した。C-peptideはアドリアマイシン投与2日前より1日2回皮下投与した。この量ではどのマウスは観察期間内では死亡なかった。心臓重量はC-peptide 投与により15%保持されていて、心保護作用が示唆された。病理的、分子科学的評価が現在行われている。
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