まず、日英間で小規模~中規模入院心不全疾患レジストリを用いて入院心不全患者背景、内服内容、短期予後の日英間差を検討した結果、背景因子や治療内容で補正後も英国心不全症例は日本人と比較して有意に死亡率が高いことが明らかとなった。これらレジストリから保存血を用いて心不全の代表的予後予測バイオマーカーであるN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-pro BNP)を測定した。NT-pro BNPで両国心不全症例を5分位に層別化した結果、両国心不全症例においてNT-pro BNPは同様の予後予測能を持つことが明らかとなった。 次に米国急性心不全コホートで作成され、妥当性が検証済みの5つの予後予測モデルの妥当性を検証したところ、本邦心不全症例では英国症例と比較して予測モデルの当てはまりが悪く、死亡率を有意に過大評価することが明らかとなった。この結果は人種や医療システムの異なる多国間で普遍的な予後予測モデルを作成・適用することが困難であることが示唆され、同様の人種・食生活・医療システムを持つ集団毎に予後予測モデルを作成する必要性があると考えられた。 さらに、医療ビッグデータを用いた日英米台アジア欧米間心不全診療実態調査(同一定義、同一解析法、かつ同一研究チームで比較)においても、本邦の心不全診療は他国と比較して85歳以上の超高齢者を対象とすることが多く、入院中に多くの医療資源(心臓カテーテル検査・治療等)が消費されている一方、院内死亡率が高い現状が明らかとなった。
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