研究課題/領域番号 |
18K08123
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
西平 賢作 宮崎大学, 医学部, 研究員 (60736312)
|
研究分担者 |
植田 初江 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (40522983)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 急性冠症候群 / 循環器病学 |
研究実績の概要 |
急性冠症候群(急性心筋梗塞・不安定狭心症)の多くは、冠動脈硬化巣(プラーク)の破綻に伴う血栓形成により発症することが明らかとなっている。急性冠症候群は、心臓性突然死につながる高リスクの病態である。そのため、その病態の解明と予防・治療法の確立は医学のみならず社会的にも急務の課題となっている。本研究では、病理組織所見と臨床像を対比することで、再発しやすい、もしくは死亡率の高い高リスク患者を抽出する高感度の組織診断法を確立することを目的の一つとしている。 まず、平成30年度は、急性冠症候群患者からカテーテル治療の際に得られる冠動脈血栓吸引物の収集を主に行いつつ、その標本を用いて病理組織学的評価を並行して行った。本研究では、血栓年齢(血栓形成の時間経過)に着目し、その組織性状と臨床所見や予後との対比を行った。その結果、冠動脈吸引血栓中の50%以上に陳旧性血栓を認め、その存在が心筋壊死やカテーテル治療への反応性の悪さと相関し、さらには、中期死亡(発症6ヶ月時点)の予測因子となり得ることを明らかにした。 また、同様にカテーテル治療の際に得られる冠動脈アテレクトミー標本の病理組織学的解析を行い、血栓形成のトリガーとなりうる組織因子や炎症細胞を病状のより不安定な患者(不安定狭心症患者)で多く認めることも明らかにした。 以上のことから、カテーテル治療の際に得られる冠動脈血栓吸引物 (陳旧性血栓の存在) やアテレクトミーの構成成分は、再発しやすい(予後の悪い)高リスク患者を抽出する新規バイオマーカーとなり得る可能性が示唆された。今後は、冠動脈イメージングとの対比なども含め、さらなる検討を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
冠動脈イメージングにおいて主として用いる予定であった冠動脈内近赤外線分光法(NIRS-IVUS)の適応患者が想定外にも少なく、対象となり得る患者が少なかったため。
|
今後の研究の推進方策 |
さらなる組織標本や冠動脈イメージング(光干渉断層法やNIRS-IVUSなど)も含めた臨床データの収集を行いつつ、病理組織学的解析も同時並行して行う。
|