研究課題
急性心筋梗塞・不安定狭心症からなる急性冠症候群の多くは、冠動脈硬化巣の破綻を契機とした血栓形成により発症することが明らかとなっている。急性冠症候群は、突然死やその後の心不全などにつながる高リスク病態であり、その病態解明と予防・治療法の確立は医学のみならず、急激な高齢化の進む日本において社会的にも喫緊の課題となっている。本研究は、病理組織所見と臨床像を対比することで、治療中の合併症をおこしやすい、再発しやすい、もしくは死亡率の高い高リスク患者を抽出する高感度の病理組織診断法を確立することを目的の一つとしている。平成31年度は、前年度に引き続き急性冠症候群患者の吸引血栓を収集を継続しつつ、その病理組織学的所見と臨床像との対比を行った。その過程で、家族性高コレステロール血症を合併した急性冠症候群患者の責任病変(急性冠症候群の原因となった病変)において、酸化LDLコレステロールが富んでいることを病理組織学的評価および冠動脈内イメージング(近赤外線分光法、NIRS-IVUS)にて確認し、これを報告した。また、急激に進行する臨床的に不安定な動脈硬化巣はNIRS-IVUSにて強信号であり、カテーテル治療中の合併症である冠血流低下・末梢塞栓を起こしやすい可能性を報告した。以上のことから、カテーテル治療中に得られる責任病変の組織性状を評価することで、心血管病を起こしやすい(高リスクの)家族性高コレステロール血症症例の病態解明や、予後の悪い症例や、治療中の合併症を起こしやすい症例を抽出しうる可能性が示唆された。今後も冠動脈イメージングの対比も含め、さらなる検討を行う予定である。
3: やや遅れている
急性冠症候群患者、および血栓吸引・冠動脈アテレクトミー適応患者が想定外にも少なく、その結果、研究対象となり得る患者が少なかったため。
引き続き病理サンプルや、冠動脈イメージング(NIRS-IVUS、光干渉断層法など)も含めた臨床データの収集を行いつつ、病理組織学的解析も同時並行して行う。
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